大谷翔平様 未知の世界を行く君へ 『野村克也からの手紙』

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二刀流で活躍する大谷翔平に対して、野村氏は注文が一つあると書いている 【写真は共同】

 2018年、メジャー・リーグに渡り、投打の二刀流に挑んだ大谷翔平。成績は、打者として打率2割8分5厘、22本塁打、61打点、投手として4勝2敗、防御率3.31。シーズン後半は右ヒジのケガで打者に専念したものの、その活躍は全米中のファンを熱狂させた。

 そんな大谷の夢を追う姿勢に、一通の手紙をしたためてエールを贈っているのが野村克也氏だ。「昔はスター選手といえば超個性派の集まりだったが、君は素直で、とてもいい子。“優等生”のイメージさえある」と、NPB時代から注目していた天才の印象を語る。そのうえで、野球に打ち込む少年少女のためにも、注文が一つあると書いている。

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大谷、神の子、不思議の子 後輩たちのより良い見本たれ

 メジャー・リーグでの君の活躍は、連日のように見ているよ。初めはずいぶん低く評価されていたようだがフタを開けてみれば、この活躍。アメリカのマスコミもファンも、さぞ驚いたことだろう。

 君はアメリカでもこのまま、“二刀流”を貫くようだな。

 二刀流に賛成か、反対か。私の考えは正直、ずいぶん揺れ動いたよ。

 君が日本ハム入りし、栗山(英樹)監督が「大谷は二刀流でいく」とぶちまけたときは、真っ先に「プロ野球をなめんなよ」と思った。

 日本プロ野球80年の歴史において、二刀流にチャレンジした選手は、過去にもいた。例えば、『プロ野球ニュース』などの解説でもおなじみの、関根潤三さん(近鉄ほか)。しかし結局は、バッター一本に絞ることになった。

 プロ野球は、やはりそんなに甘くない。過去80年で一人も成し遂げられなかったことは、常識的に考えても容易にできるはずがないのだ。君の場合も、「二兎を追う者は一兎をも得ず」になるのではないか、と私は思った。

 しかし、そんな私たち“二刀流反対論者”の声を知ってか知らずか、君は涼しい顔で活躍を続けた。

 そのうち、私は自分の見方を考えるようになった。選手としても、指導者としても、最もよくないのは固定観念を持つことだ。野茂英雄(元近鉄ほか)のトルネード投法も、イチロー(マリナーズ)の振り子打法も、「変則すぎる」と固定観念をもって直していたら、彼らの活躍はなかっただろう。今ならソフトバンクの柳田悠岐のアッパースイングもそうだな。

 私は「二刀流反対」の考えを改めた。君の、あのプレーを見せられれば、私が監督でも二刀流をやらせたくなるだろう、と思った。

 その後、折にふれ君を見ていて、いくつか興味深いことがあった。
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