W杯で15位、世界との差は「想定内」 7人制ラグビー日本代表の挑戦は続く

斉藤健仁

新指揮官の下で戦ったW杯

強豪・フィジー代表を相手に突破する日本代表・坂井 【写真は共同】

 リオ五輪の再現とはならなかった。
 7月20〜22日、4年に1度の7人制ラグビー(セブンズ)のワールドカップ(W杯)がアメリカ・サンフランシスコにある「AT&Tパーク」で行われた。リオ五輪で4位に入賞した男子日本代表は、岩渕健輔HC(ヘッドコーチ)を新しく指揮官に迎え、過去最高のベスト8を目標に大会に臨んだ。

 24チームが参加した今大会は1回戦から一発勝負のノックアウト方式で、15シードの日本代表は初戦で18シードのウルグアイ代表と対戦し、2回戦で第2シード、リオ五輪金メダルの「セブンズ王国」フィジー代表と対戦することが決まっていた。つまりターゲットのベスト8を達成するにはフィジー代表を倒す必要があった。

リオ五輪4位も「99.9%の人は何も言わない」

リオ五輪では優勝候補のニュージーランド代表を破る大金星を挙げたが、メダルには届かなかった 【写真:ロイター/アフロ】

 リオ五輪後、指揮官にはニュージーランド(NZ)出身のダミアン・カラウナ氏が就いた。セブンズNZ代表のコーチを務めていた人物だったが、思うように選手を招集することがかなわず、2016―17シーズンにWSから降格。4月の昇格大会では「経験ある選手」を起用したことが功を奏し、18−19シーズンからの再昇格を決めた。

 ただ日本ラグビー協会は、東京五輪まで800日を切る中で、総合的に判断してカラウナHCとの契約を更新せず、カラウナHCを支えてきた男女セブンズ総監督の岩渕健輔氏が男子HCを兼務することになった。2015年までの4年間はGMとして15人制日本代表のマネジメントも担っていたが、2008年からコーチとして、ずっとセブンズの指導には関わり続けていた。

 岩渕氏は、長らくセブンズに関わってきた意図を「ラグビーを日本の中でこれ以上発展させるためには、ラグビー界の中だけでやっていても無理。五輪の力を借りないといけない」と説明した。
 実は、リオ五輪で過去最高の4位になっても他競技のメダルラッシュにかき消されて空港には誰の迎えも来なかったことや、JOC(日本オリンピック委員会)の中では4位は出場できなかった競技と同じくくりになっていたことを通して「(4位では)99.9%の人は何も言わない。どのスポーツの世界でも勝たないと応援してもらえない。五輪でメダルを取らないといけない、取るしかない」と危機感も口にしていた。

岩渕HCが取り組んだこと

短い期間でW杯に臨んだ岩渕健輔HC 【斉藤健仁】

 マネジメントサイドから現場に戻ってきて、まず岩渕HCは五輪でメダルを獲得することを長期の目標に掲げつつ、大きな国際舞台であるセブンズW杯までの2カ月を切った中で何をしたのか――。

 最初の練習ではいきなり13分間のアタック&ディフェンスから入った。まるでエディー体制を彷彿させるかのようだった。岩渕HCは「一気に急に変わらないが、メダリストと同じメンタリティーを持つことはできる。メダルスタンダードをすべてのエリアでやっていこう」とセブンズらしく、フィットネス強度の高い練習を行った。また「W杯やその先を考えて、たどり着かないといけない場所を考えると時間がない」と早朝のフィジカルトレーニングも課した。

 また岩渕HCは「世界で勝つためにはラグビー界だけで考えていては無理。南アフリカやNZに(ラグビー以外で)上回れるところもある」とJISS(国立科学センター)からも運動生化学の専門家を呼んで睡眠の質を高めることや熱処理の対策などをしてコンディショニングを整えるなどラグビー以外の強化策も同時に進めた。

攻守のイメージは「蜂」

7人制に専念してチームを引っ張っている小澤(写真はワールドシリーズ) 【写真:Haruhiko Otsuka/アフロ】

 6月23〜24日、北海道で行われたピリカモシリセブンズでは、選抜チームとして臨んで準決勝でオーストラリア選抜を下して優勝した。さらに7月1日のジャパンセブンズでも東海大を下して優勝。特にジャパンセブンズでMVPを獲得した30歳の橋野皓介やリオ五輪にも出場した35歳の副島亀里ララボウ ラティアナラが目立った。1カ月間は戦術よりもフィジカル、フィットネストレーニングに重きを置いた結果だった。「(ベテラン選手たちも)年齢に関係なく、しっかりトレーニングすればまだまだ先頭に立っていける」(岩渕HC)

 セブンズW杯本番が近づくにつれて、戦術練習への時間も割いて本番を迎えた。大会前から分析に力を入れて15分の動画を全員に配布するなど「過去の国際大会を分析すると1戦目がうまくいかないと後が続かない」(岩渕HC)と、初戦のウルグアイ代表に焦点を当てていた。また指揮官が選手たちにプレゼンしたラグビーは「蜂」だった。「嫌がられるような、しつこいディフェンスをして一撃で刺すというイメージでわかりやすかった」(橋野)

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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