未来の日本代表が「国内留学」で進化 早稲田大ラグビー部の新たな試み
周囲を生かし、圧巻のトライも奪ったCTB中野
中野は豪快な突破だけでなく、周囲を生かすパスでもチームに貢献した 【斉藤健仁】
さらに32分には、前を見て判断し自ら相手ディフェンスの間を走り切ってトライ、さらに38分には味方がタックルでターンオーバーした後、すぐにピック&ゴーで抜け出して60mほどを走り切ってトライを挙げた。しっかりと前が見えている証拠だ。
今年から、早稲田大は選手たちが話し合ってアタック戦術をポッドではなくシェイプに変えたこともあり、中野は12番として、重層的なアタックラインを形成することを意識したことで「ポッドのときより狙われにくくなりました」という。また「フェイズの中でFWを使ったり、相手をコミットさせて外のスペースを使ったりと周りを生かすことをサントリーで習った」というプレーが随所に出ていた。
この試合は、高校時代から見てきた中野のプレーの中では随一であり、インサイドCTBとして一皮むけた印象だ。
フィールドを“支配”するSH齋藤直人
正確なゴールキック、相手ボールを奪うジャッカルでも存在感を発揮している齋藤直人 【斉藤健仁】
真価を発揮したのは6トライを挙げた後半だった。サントリーの練習を通して良くなったことは「ポイントからポイントの中間走で、相手ディフェンスを見ながら動けるようになったこと」と胸を張った。ほかにもSHとして肩をスクエアに保つこと、そして両サイドの判断など細かいところも指導を受けていたという。
ディフェンスでは終始、声を出し続けていた齋藤は、後半11分にはターンオーバー直後に、左足のキックでスペースを突く。さらに、20分、中盤で少し走って相手のディフェンスを引きつけてから、味方のFL幸重天(ゆきしげ・たかし/3年)にパスし、幸重がゲインすると、そのままフォローしてパスをもらってゲイン、ラックから右サイドに攻めたアタックがトライに結びついた。
後半は、両チームの先発メンバーの中では一番小さな身長165cmの齋藤が、パスでリズムを作りつつ、フィールドを支配していた。
「今年度は大学日本一になりたい」
将来の日本代表に向けて成長を続けている 【斉藤健仁】
中野、齋藤ともに「創部100周年ということは特に意識していないが、大学選手権で優勝するために早稲田大に来たので、今年度は大学日本一になりたい!」と声をそろえた。
日本代表候補に選ばれている齋藤は「常に見られているという意識はしています。代表候補として責任を持って、恥じないプレーをしたい。(2019年ワールドカップに向けては)一選手としてチャレンジしたい」と意気込み、中野も「自分も(齋藤に)負けないように成長していきたい!」と先を見据えた。
このまま大学でも高いパフォーマンスを続ければ、中野や齋藤はサンウルブズや日本代表に選出される可能性も出てくるかもしれない。いずれにせよ、「鉄は熱いうちに打て」、「可愛い子には旅をさせよ」という言葉を肌で感じた大学の開幕戦となった。