錦織とジョコ、違いはミスとここぞの体力 浅越しのぶの全米オープンテニス解説

構成:スポーツナビ
 テニスの四大大会最終戦「全米オープン」第12日が7日(日本時間8日)、米国のビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンターで行われた。男子シングルス準決勝に出場した世界ランク19位の錦織圭(日清食品)は、元世界1位で現6位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)にセットカウント0−3(3−6、4−6、2−6)のストレートで敗れ、4年ぶりの全米決勝進出はならなかった。

 スポーツナビでは、04年全米オープン女子シングルスでベスト8に進出した、元プロテニスプレーヤーの浅越しのぶさんに試合を解説してもらった。

少ないチャンス……力みが出た錦織

勝負どころでのミスが目立った錦織。4年ぶりの全米オープン決勝進出はならなかった 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 先にリズムをつかんだのはジョコビッチ選手でした。ジョコビッチ選手は、第1セットの試合への入り方が良かったのとストロークに安定感がありました。錦織選手には逆にリターンミスやストロークミスもありましたね。

 錦織選手は、ここという大事なポイントで少し力が入ってしまった印象です。リターンで中に入って打つのですが、少し“ジャストアウト”する。中途半端なところに返すとジョコビッチ選手に攻撃されてしまうので、厳しいところに攻めないといけないという意識があったと思います。でも厳しいところを狙うと、まさにボール1つ分だけアウトになる。
 チャンスの場面が少なかったからか、「決めに行かないと」という力みや、気負いのようなものがあって、それがミスにつながってしまったのかなというのはあります。
「攻めないと」という気持ちは出ていたので、それはすごく良い事だと思うのですが、それとプレーとが上手くかみ合っていなかったというのはありました。

 ジョコビッチ選手はストロークの深さ、正確性がありました。錦織選手がワイドに攻撃しても、返球のボールが深くて素晴らしかったです。多くの選手は走らされたら浅いボールを返してくるので、それをコートの中に入ってタターンと打ち返して攻撃する。それが錦織選手の攻撃パターンとしては多いのですが、ジョコビッチ選手はバックに走ってもフォアに走っても返球が深い。ラリーから次の攻撃につなげたいところでしたが、コートの中に入る機会がほとんどありませんでした。

 そして、良いところでのミスが少なかったです。例えば40−0から1ポイント、2ポイントを落としても、それほど問題はありません。でもブレークポイントで落としてしまうと、選手にとってはすごくダメージが大きい。そういう面で言うと、錦織選手の方は大事なポイントで落としてしまう場面が多かったです。

勝負は第2セット ネットプレーで勝機を狙う

ジョコビッチのストロークの深さ、正確性はさすが。ラリーでベースをつくり、チャンスを逃さなかった 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 第2セットは錦織選手もすごくいい展開でした。それまでは自分のボールをどこに打っても返されるという意識があったと思いますが、強引にでもネットプレーを使いはじめました。それでいくつか錦織選手がポイントを重ねていました。どうにもならない状況でも、引き出しをさらに持っている、錦織選手のバリエーションの多さが見えたセットだと思います。
 ネットプレーは体にすごく衝撃がくるので体力的に消耗しますし、ネットプレーヤーではないのでそればかりを仕掛ける事はできないですが、チャンスが見つけられない中で「ネットを取ろう」と頭を切り換える意識が出ていました。
(ネットプレーでの体力的な面とは?)走る距離もありますが、ネットプレーをするときは足を開いてしっかりと止まらないといけないので、その動きで負担がかかります。それはネットプレーヤーでも体力的にきついことだと思います。
 第3セットは自分のサービスゲームを1つブレークされた時点で、錦織選手の気持ちが折れてしまった感じはありました。第2セットが勝負だったのではないかと思います。

 錦織選手は今回、サービスブレークは一度もできませんでした。あとは第1セットの入りがもう少し良かったらと思いました。プレーが上手く“絡まない”、そんな印象でした。
(上手く絡まないというのは?)なんだかしっくりこないという感覚でもありますし、今回の錦織選手の場合はいろいろと作戦が多かったのかなと思いました。やる事が多過ぎても、あまり上手くいかないときがあります。もちろん、本当のところはどうなのか、本人に聞いてみないと分からないです。でも、作戦をどうにか立てたのかもしれないですが、それも上手くいかない。そうやって立ち上がりの3ゲームを落とし、相手に先にリズムをつかまれたという感じはしました。

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