連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
日比野菜緒、夢を叶えてぶつかった悩み
“外の世界”が教えてくれた人生とテニス

 女子テニスの国際大会「花キューピットジャパンウイメンズオープンテニス(以下、JWO)」の本戦が9月10日から16日、広島県・広島広域公園テニスコートで行われる。


 大会に臨む日本女子プレーヤー紹介連載の第3回は、日比野菜緒(ルルルン)だ。グランドスラムを頂点とするテニス界。五輪への意識の高さは選手によって異なるが、日比野にとっては夢の舞台。目標のひとつだった。しかし、2016年リオデジャネイロ五輪に出場し夢を叶えた後、日比野は新たな目標を見つけられずにいた。

ツアー優勝、五輪出場……次々に叶えた夢

ツアー優勝、五輪出場……夢を次々に叶え、それゆえに悩みを抱えた日比野菜緒。しかし今季は、そこから一歩踏み出そうとしている
ツアー優勝、五輪出場……夢を次々に叶え、それゆえに悩みを抱えた日比野菜緒。しかし今季は、そこから一歩踏み出そうとしている【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 10代の時に紙に書き出した“未来予想図”は、「リオオリンピック出場」を最後に途切れていた――。


 20歳でツアー優勝することも、国別対抗戦フェドカップの日本代表として戦うことも、そして憧れ続けた五輪に出ることも……全ては18歳の頃に立てたプラン通りに、驚くまでに実現していく。それにも関わらず……いや、だからこそ、五輪のその先に、彼女が描く未来はなかった。


 15年10月のタシュケント・オープンでツアー優勝し、翌年早々にランキングはキャリア最高の56位に到達。何もかもが初めての経験のなかで、16年シーズンは新鮮な興奮に彩られて過ぎていった。

 さらには翌年も、日比野は2度のツアー準優勝、そして全米オープンでグランドスラム初勝利をつかみ取る。周囲から見れば、多くの収穫に満ちていたかに思われたシーズン。

 だが当人の胸中は、外側から伺えるそれとは、大きく趣を異にしていた。


「ランキングが少しずつ下がっているのを感じていたし、グランドスラムでも全然良いドローをひかないし。自分のテニスの目標や向上心もなく、ただランキングを落としたくないので試合に出るという状態で……」


 新たな目標を立てようと、紙に「世界1位」と書いてみても、どこか空々しく映る。ツアーに1年以上身を置き、その道の険しさを知る今となっては、頂点に立つ夢を嬉々(きき)として語るほど無邪気ではいられなかった。 


「全然楽しくなかったですね……去年は」


 端的な物言いに、彼女は本心を真っすぐ込めた。

内田暁

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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