連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
日比野菜緒、夢を叶えてぶつかった悩み “外の世界”が教えてくれた人生とテニス
きっかけは些細なこと 新たに芽生えたテニスへの思い
ダブルスパートナーとともに、アイスクリームショップで楽しむ日比野(左)。写真は2018年1月撮影、右はダリヤ・ユラク(クロアチア) 【Getty Images】
下降するモチベーションがついに底を打ったのが、全仏オープンを控えた今年4月頃。全仏には「出場を約束したダブルスパートナーのために出る」と割り切り、重い心を引きずりパリ行きの飛行機に乗った。
だがそのある種の開き直りが、彼女の視野を押し広げる。いつもは、遠征に出てもホテルと会場の往復のみだったのが、観光やショッピングにも出かけた。普段なら会場や近所で済ませていた食事も、地下鉄を乗り継ぎ、評判のレストランに足を運んでみる。
人生は、テニスだけではない――。
コート外での“初”を通じそう思えた瞬間から、逆説的に、テニスへの想いが再び燃え盛った。その気付きを与えてくれた、遠征先で出会う人々や、同じ拠点で練習する同期の加藤未唯(ザイマックス)らの存在の大きさにも、あらためて気付かされる。
「周りの人のお陰で、少し変われました」
照れくさそうに、彼女は言った。
JWOは「1年で一番楽しみにしている大会」
現在掲げる目標は、「もう一度、トップ100に戻ること」。ただそれはあくまで数字上の話で、真のテーマは「予選だろうが本戦だろうが、その時々に出ている大会で、どれだけ輝けるか」だ。
だからこそ迎えるJWOでも、目指すは「一番よいところ」。
「1年で一番楽しみにしている大会。去年準優勝した(加藤)未唯のように活躍して、盛り上げたいと思います」
途絶えた未来予想図の先は、定めた枠組みの中ではなく、無限に広がるキャンパスに描いていく。