昨年準V…葛藤のシーズンを戦う加藤未唯 それでも前向き強気で「勝つしかない!」

内田暁
 女子テニスの国際大会「花キューピットジャパンウイメンズオープンテニス(以下、JWO)の本戦が9月10日から16日、広島県・広島広域公園テニスコートで行われる。
 女子プロテニスを統括するWTA(女子テニス協会)ツアーとして行われる同大会には、世界のトップ選手のほか、日本選手たちも多数出場。世界を舞台に切磋琢磨(せっさたくま)する日本女子プレーヤーたちを、全5回にわたって紹介する。

 第1回は昨年の同大会で準優勝した加藤未唯(ザイマックス)。17年はJWO準優勝のほか、ダブルスでも全豪オープンで準決勝に進出し充実のシーズンを過ごした。そして18年、期待に胸を膨らませたシーズンで、加藤は白星を求めてもがいていた。

笑顔の準優勝から1年 勝ち星に恵まれぬ日々

昨年のJWOで準優勝した加藤未唯。今季は苦しい戦いが続くが、それでも強く、前を向いている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 一年前のあの時、彼女はうれしそうに笑っていた――。

 試合には負けはしたが、対戦相手のザリナ・ディアス(カザフスタン)と握手を交わす彼女は、敬意を込めた会釈と同時に、顔中に笑みを広げた。

「私、めっちゃ笑ってる」

 後にその場面を写真で見て、彼女は再び、驚きと照れの混じった笑みをこぼした。
 昨年のジャパンウイメンズオープンは加藤未唯にとり、予選から決勝までシングルス8試合、ダブルス2試合を戦い抜き、その全試合で揺れ動く感情を御し続け、最後は笑顔で準優勝を勝ち取った思い出の大会である。

 それから1年近くの月日が流れ、2018年シーズンも折り返し地点を過ぎた時、加藤は「今年はまだ何もやってない」との思いを抱えていた。自身への期待も膨らみ挑んだ今季だが、4月下旬から7月上旬にかけての2カ月半、単複いずれでも勝ち星に恵まれぬ日々を過ごす。
 その一因には、昨年末に負った足の捻挫もあっただろう。復帰後は、脳裏に映るイメージに重ならぬ体を急き立ててコートに立つも、重なる敗戦に一層の焦りを募らせもした。勝利を求め下部ツアーに出るも早期敗退が続き、ならばダブルスで高いレベルの戦いに身を慣らそうとしたが、自分らしさが出しきれない。何かがかみ合わない……。そんなもどかしさを抱えたまま、最も楽しみにしていた初夏の赤土(クレーコート)の季節も過ぎていった。

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著者プロフィール

テニス雑誌『スマッシュ』などのメディアに執筆するフリーライター。2006年頃からグランドスラム等の主要大会の取材を始め、08年デルレイビーチ国際選手権での錦織圭ツアー初優勝にも立ち合う。近著に、錦織圭の幼少期からの足跡を綴ったノンフィクション『錦織圭 リターンゲーム』(学研プラス)や、アスリートの肉体及び精神の動きを神経科学(脳科学)の知見から解説する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。京都在住。

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