連載:ジャパンウイメンズテニス注目選手たち
昨年準V…葛藤のシーズンを戦う加藤未唯 それでも前向き強気で「勝つしかない!」
女子プロテニスを統括するWTA(女子テニス協会)ツアーとして行われる同大会には、世界のトップ選手のほか、日本選手たちも多数出場。世界を舞台に切磋琢磨(せっさたくま)する日本女子プレーヤーたちを、全5回にわたって紹介する。
第1回は昨年の同大会で準優勝した加藤未唯(ザイマックス)。17年はJWO準優勝のほか、ダブルスでも全豪オープンで準決勝に進出し充実のシーズンを過ごした。そして18年、期待に胸を膨らませたシーズンで、加藤は白星を求めてもがいていた。
笑顔の準優勝から1年 勝ち星に恵まれぬ日々
昨年のJWOで準優勝した加藤未唯。今季は苦しい戦いが続くが、それでも強く、前を向いている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
試合には負けはしたが、対戦相手のザリナ・ディアス(カザフスタン)と握手を交わす彼女は、敬意を込めた会釈と同時に、顔中に笑みを広げた。
「私、めっちゃ笑ってる」
後にその場面を写真で見て、彼女は再び、驚きと照れの混じった笑みをこぼした。
昨年のジャパンウイメンズオープンは加藤未唯にとり、予選から決勝までシングルス8試合、ダブルス2試合を戦い抜き、その全試合で揺れ動く感情を御し続け、最後は笑顔で準優勝を勝ち取った思い出の大会である。
それから1年近くの月日が流れ、2018年シーズンも折り返し地点を過ぎた時、加藤は「今年はまだ何もやってない」との思いを抱えていた。自身への期待も膨らみ挑んだ今季だが、4月下旬から7月上旬にかけての2カ月半、単複いずれでも勝ち星に恵まれぬ日々を過ごす。
その一因には、昨年末に負った足の捻挫もあっただろう。復帰後は、脳裏に映るイメージに重ならぬ体を急き立ててコートに立つも、重なる敗戦に一層の焦りを募らせもした。勝利を求め下部ツアーに出るも早期敗退が続き、ならばダブルスで高いレベルの戦いに身を慣らそうとしたが、自分らしさが出しきれない。何かがかみ合わない……。そんなもどかしさを抱えたまま、最も楽しみにしていた初夏の赤土(クレーコート)の季節も過ぎていった。