W杯で15位、世界との差は「想定内」 7人制ラグビー日本代表の挑戦は続く

斉藤健仁

リオ五輪金のフィジーを前半リードするも…

15人制よりも7人制を得意とするフィジー代表 【写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 ウルグアイ代表戦はこの2カ月が集約された試合だった。前半、坂井克行、橋野がゲームコントロールし、ジョセファ・リリダムらがしっかりトライを挙げた。ディフェンスもキックオフから相手にプレッシャーを与えてターンオーバーからトライにつなげた。前半だけで26対0とほぼ勝負を決めて33対7で快勝。

 同日、ベスト8をかけてフィジー代表と激突した。日本代表は外国出身者6人を先発させて、勢いと運動量で上回って主導権を握り、前半は副島やジョセ・セルがトライを挙げて10対7で折り返した。リオ五輪のNZ代表撃破の再来なるかと期待したファンも多かったはずだ。

 後半も最初は日本代表がボールキープしチャンスを作る。しかし、相手のプレッシャーがないところで副島、セルがパスミスをしてしまい、坂井も1対1のタックルで相手に抜かれてしまう。一度、フィジー相手に流れを奪われるとなすすべはなく、後半だけで4トライを奪取されて10対35で大敗した。

「体がきつくなって地力の差、シンプルな差が出た。しかも1日目の2試合目なので本来ならそれが出てはいけないところ。リオ五輪の時も3日目の5試合目(フィジー代表戦)、6試合目(南アフリカ代表戦)で出てしまったが、(それが)改善できていないことがはっきりした」と岩渕HCが指摘すれば、リオ五輪組の坂井も「善戦したとは言え、(前半の)7分しか持たなかった。フィジー代表戦の前半を3日間で6試合できないとメダルは獲れない」と反省していた。

2日目にパフォーマンス低下「メンタル的なところ」

ベテランとして日本代表を支えている副島(写真はリオ五輪) 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 9位〜16位トーナメントに回った2日目、明らかにパフォーマンスが落ちた。カナダ代表(17対35)はキックオフで崩されて、ロシア代表(20対26)は相手がシンビン(一時退場)中にトライを取られるなど集中力を欠いて連敗してしまった。
 小澤大キャプテンが「初日、あれだけいいプレーをしていたのに2日目の入りが悪かったし、雰囲気も疲れていた。もっと一つのチームになるようにしないといけなかった」と言えば、岩渕HCも「疲れではない。初日に懸けていたところがあってスキルや技術ではなくメンタル的なところが大きい。自分たちでスタンダードを下げてしまった」と肩を落とした。

 3日目の最終戦は15〜16位決定戦のケニア代表(9シード)戦だった。日本代表は昨季のWSで2度決勝に進出している強豪相手に素晴らしいゲーム運びを見せ、加納遼太がトライを挙げるなど26対14で快勝し、15位で大会を終えた。「日本代表の力を出せて、(ケガ人が出て)10人しかいない中で勝って終われて良かった。もっと上の順位に行けたのかな。すごく波があるので、その波をなくしていきたい」(小澤キャプテン)

 新体制となった男子セブンズ日本代表の最初の挑戦が終わった。リリダムがセブンズW杯で「ドリームチーム(ベスト7)」に選ばれたことは明るい兆しだ。小澤キャプテンは「強豪は6試合目まで集中力があり、基本スキルやプレーの質も高い。正確性、フィットネス、筋力をもっとやっていかないといけないと気づかされた大会でした」と振り返れば、セブンズ9年目の坂井は「自分の中では、ボールを確保できたら(強豪相手にでも)得点が取れたことは一番の収穫です。最後にものを言うのは経験です。メンバーを固定して経験することが大事」と語気を強めた。

「手応えでもあるし、大きな反省でもある」

東京五輪でのメダル獲得に向けて、挑戦は続いていく 【斉藤健仁】

 国際大会で初采配となった岩渕HCは「準備すればいい試合できる手応えをつかんだ一方で、うまくいかないと2日目のようになってしまう。手応えでもあるし、大きな反省でもあります。最初と最後に勝つことができたことは前向きな形で終われたが、世界との差とメダルに向けての道のりが楽ではないことはがはっきりしました」と総括した。

「世界とどれくらいの差があると知りたいと思っていましたが想定内でした」と坂井が言うように、日本代表の現状の力はよく見積もっても世界の10位前後であろう。まずこの1年でどこまでチーム力を高めることができるかが焦点になる。岩渕HCは「2020年のオリンピックイヤーのWSでベスト4に入るような戦いをできないとメダルを取れない。だから18―19のWSでベスト8に3回以上入らないとメダルの道は遠ざかる」と先を見据えた。

 8月末には4連覇を期待されているアジア競技大会があり、11月末からはWSと岩渕ジャパンの戦いは続いていく。メダルを目指す東京五輪まであとちょうど2年と待ったなしだ。まず、WSで世界の強豪と伍して、ベスト8にコンスタントに進出できるよう、「メダルスタンダード」を下げずに、この4カ月の強化を続けてほしい。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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