男子セブンズ岩渕HCが語る五輪への覚悟
「ラグビーの今後50年が決まってくる」

提供:(公財)日本ラグビーフットボール協会

セブンズ総監督と男子代表のHCを兼任する岩渕氏が講演を行った
セブンズ総監督と男子代表のHCを兼任する岩渕氏が講演を行った【スポーツナビ】

 公益財団法人港区スポーツふれあい文化健康財団と、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会が主催する「みなとスポーツフォーラム 2019年ラグビーワールドカップ(W杯)に向けて」の第83回が5月21日、東京都港区の赤坂区民センターで開催された。


 今回は「2020年、2021年を見据えたセブンズラグビーの戦略・目指すもの」というテーマで、男女7人制(セブンズ)日本代表総監督と男子代表のヘッドコーチ(HC)を兼任する岩渕健輔氏を招き、ラグビージャーナリスト・村上晃一さん進行のもと講演が行われた。

HC就任の理由と男女セブンズの現状

現役時代の岩渕氏。08年には7人制日本代表のコーチを務めた経験を持つ
現役時代の岩渕氏。08年には7人制日本代表のコーチを務めた経験を持つ【写真:川窪隆一/アフロスポーツ】

 岩渕氏の男子セブンズHC就任が発表されたのは、講演が始まる2時間ほど前のこと。司会の村上氏が「男子セブンズHCの岩渕さんです」と紹介すると、会場は温かい拍手で包まれた。自らも7人制の選手として活躍した後、08年には7人制日本代表のコーチを務めた岩渕氏は「セブンズの選手やスタッフと過ごしてきた中で、東京五輪では違う立場で現場に立って、責任を取らなければならないと思った」とHC就任の理由を明かした。


 セブンズにとっての大舞台となる東京五輪だが、実は現時点で出場権は確約されていない。開催国枠での出場が濃厚となるが、リオデジャネイロ五輪のブラジル代表を例に取ると、早いタイミングで出場権が与えられた女子代表に対し、男子代表は国際大会での結果が不十分という理由で出場に対する議論が長い間行われ、結局、出場権が与えられたのは開催ギリギリのタイミングだった。


 日本がブラジルと同じように「国際大会での結果」を求められるとすれば、ワールドシリーズで上位に入る、またはアジアシリーズで結果を出すことが重要になってくる。男子セブンズ代表は、4月に香港で開催された昇格大会で優勝を果たし、コアチームに復帰。再び世界の舞台で戦う権利を得た。一方、現在ワールドシリーズに出場している女子代表は、北九州大会では3戦全敗を喫するなど、厳しい戦いを強いられている。

メダル獲得のために必要な“地力”

ラグビー協会と専任契約を結んだ小澤。五輪で軸となる選手たちの構想はすでに頭の中にあるという
ラグビー協会と専任契約を結んだ小澤。五輪で軸となる選手たちの構想はすでに頭の中にあるという【写真:Haruhiko Otsuka/アフロ】

 岩渕氏いわく、五輪で軸となる選手たちの構想はすでに頭の中にあるという。現在、鶴ヶ崎好昭(パナソニックワイルドナイツ)、小澤大(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、林大成の3人が日本ラグビー協会と専任契約を結んでいる。この契約は年間150〜200日程度あるセブンズの活動に参加するため、協会が選手と所属チームと結ぶ形式になっており、こうした専任選手のほかにも、10数人が企業や大学の協力により、セブンズの活動に積極的に参加している。こうした7人制に特化した選手をチームの軸としながら、15人制の選手が加わることで競争を生み、さらなるチーム力向上につなげていく。


 東京五輪までに残された2年という時間は決して長くはない。その中でセブンズをどのように強化していくつもりなのだろうか。岩渕氏はこう説明する。


「試合に向けた準備をするということは本当に大切で、リオ五輪の躍進からも分かるとおり、そこが日本チームの強さの1つだと思います。一方で、対応力や地力という部分では、日本は足りていなかった。20年(の東京五輪)に向けては、そこの部分をどうやって伸ばすかというのが、メダルを獲得するための強化の方向性になると思います」


 実際に、リオ五輪で金メダルを獲得したフィジーなどは、起用法を変えながら12人のメンバーを入れ替え、それぞれのプレー時間を調整しながら戦っていた。それに対して、地力で劣る日本は、すべての試合にフルメンバーで挑む必要があり、5、6試合目になった際のコンディションに差が出てきてしまった。目標であるメダルに到達するためには、選手たちの体力を調整しながら戦うことのできる“地力”を蓄える必要がある。

チームとして、世界一のものをいくつ作るか

東京五輪までに残された時間は長くない。日本が“地力”を蓄えるためには何をすればいいのか
東京五輪までに残された時間は長くない。日本が“地力”を蓄えるためには何をすればいいのか【写真:Enrico Calderoni/アフロスポーツ】

 では、具体的に“地力”を蓄えるためには何をすればいいのか。「やらなければいけないことは多々ある」としながらも、岩渕氏が指摘したのは「大会前にチームとして、世界一のものをいくつ作るか」ということ。岩渕氏はフィットネスやセットプレーからのトライなど、日本チームとして胸を張って「世界一」と言える部分を作れるよう、まずは2カ月後に迫った(男子セブンズの)W杯に向けて、早急に戦術を落とし込む必要があると念を押した。


 東京五輪でのメダル獲得を目標に掲げる一方で、男女セブンズの置かれた状況は決して楽観視できるものではない。まずは7月に行われるW杯に全力で挑み、フィジーやニュージーランドなど、世界の強豪を相手に結果を出すことが要求される。東京五輪までの道のりは険しいが、岩渕新HCのもと、まずはセブンズに特化した選手を育成しながら、チームの土壌を作っていくことになる。


 最後に岩渕氏は「東京五輪まで800日しかない中で、練習ができる時間というのは非常に限られています。メダル獲得という結果を出すために、1つのミスもなくやっていく必要があると思います。800日後に日本のラグビーの今後50年が決まってくると思っていますし、その覚悟でやっていきます」と抱負を語り、講演を締めくくった。

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