W杯前年「やっとジェイミージャパンに」 ラグビー日本代表、価値ある1勝1敗

斉藤健仁

イタリア相手に快勝と惜敗

イタリアを相手に2試合連続でトライを奪った日本代表FB松島幸太朗 【築田純】

 ラグビー日本代表は、6月9日、16日にイタリアと2試合を戦った。2019年ワールドカップ(W杯)でアイルランド、スコットランドと対戦する日本代表にとって、同じ欧州の強豪との対戦は現在の力量を測るには格好の相手となった。

 イタリアは世界ランキングこそ14位と11位の日本より格下だったが、伝統的な強豪国の「ティア1」に属し、毎年、シックスネーションズ(欧州6カ国対抗)で揉まれ、W杯では2003年大会以降4大会連続2勝を挙げている。近年も南アフリカやフィジーに勝利、今年もスコットランドに27対29と接戦を演じた。

 そんなイタリアとの1試合目、チーム内MVPに輝いたSO田村優の活躍もあり4トライを重ねて34対17と快勝。2試合目は相手にリードされる展開となり、残り20分で3トライを挙げたが22対25と惜敗した。

自信を得ることができた“3つの理由”

持ち味の突破力を発揮したNo.8マフィ 【斉藤健仁】

 1勝1敗だったが、それでもNo.8アマナキ・レレイ・マフィが「やっとジェイミージャパンになってきた」と振り返ったように、W杯本番に向けて自信を得た2試合となった。イタリアと遜色なく戦えた背景には3つの理由があった。

 1つ目は一貫性だ。昨年11月、遠征でトンガに勝利、フランスと引き分けたことで、日本代表のジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「いい土台が作れた。チームカルチャーが次のレベルに上がった」と手応えを口にしていた。イタリア戦の2試合のメンバーを見ても先発は昨秋と10人以上が同じで、ほぼメンバーを固定して戦っていたことがわかる。

 2つ目はサンウルブズ効果だ。今年からジョセフHCは、日本代表とサンウルブズの指揮官を兼任し、強化にあたってきた。33人のうち30人はサンウルブズメンバーで、ほぼ同じコーチ陣、戦術で選手にスーパーラグビーの高い強度の経験を積ませた。またフィットネス、フィジカルのトレーニングも積極的に課した。

 3つ目はジョセフHCのマネジメントだ。昨年の6月はスーパーラグビーから、そのまま代表期間に突入し、準備や選手のメンタル的な切り換えで難しい部分があった。昨年の経験を踏まえ、今年はスーパーラグビー期間中にも関わらず、主力に1週間のオフを与え、さらに宮崎で1週間の合宿を敢行。戦術の落とし込み、組織ディフェンス、セットプレーの確認、チームビルディングなどにあてて試合に臨んだ。

スクラム、ラインアウトが安定

低く構える日本代表のスクラム。自信を深めている 【斉藤健仁】

 プレー面についても触れたい。イタリアと互角以上に戦えた上で大きかったのはセットプレーの安定だ。欧州勢はスクラム、ラインアウトといったセットプレーが強く、6月23日に戦うジョージア戦も含めて、FWが試される1カ月だった。

 イタリア代表との2試合でマイボールスクラム成功率は12/12(1試合目10回、2試合目2回)、マイボールラインアウトの獲得率は29/31(1試合目15回、2回目16回 ※クイックスロー含む)とともに9割を超える成功率を誇った。1試合目の4トライはすべてセットプレーが起点となった。

 スクラムに関してはサンウルブズから長谷川慎コーチが指導し、HO堀江翔太も「慎さんと出会ってコツコツやってきてどんどん進化している。まだまだ慎さんの中では引き出しがあるようですし、自分たちの進んでいる道は間違っていない」と胸を張った。またラインアウトはジョセフHC自らが担当し、4月のサンウルブズのニュージーランド遠征から5人、6人といったラインアウトを試す中で成功率を上げてきた。

 また、アタックを担当するトニー・ブラウンコーチも快勝した1試合目は「相手にたくさんプレッシャーを与えることができた。コーチとしてやりたかったことを遂行できた。アタックシェイプ(攻撃の形)はしっかり取り組んできたので勢いのある攻撃ができた」と及第点を与えた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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