ラグビー女子7人制代表、全敗に危機感 「言葉に質が追いついていない」

斉藤健仁

「トップ8」を目指して臨んだ北九州大会

18歳の平野優芽が何度もチャンスをつくったが、勝利には届かず 【斉藤健仁】

 サクラセブンズが再び、世界の高く、強い壁に跳ね返された。

 4月21日、22日、F1のように世界を転戦する女子セブンズ(7人制ラグビー)のサーキット大会・ワールドシリーズ(WS)が福岡県北九州市のミクニワールドスタジアムで開催。「サクラセブンズ」こと女子セブンズ日本代表は、今季からWSすべてに出場することができる世界トップ11のコアチーム再昇格を果たしていた。

 だが今季、12月のドバイ大会は最下位に沈み、2月のシドニー大会は11位で、総合11位と苦しい戦いが続いており、このままでは再びコアチームから降格してしまうおそれもあり、中村知春キャプテンは今大会の目標を「トップ8」に掲げた。またコアチームで戦い続けることは「東京五輪でメダルを獲得するための絶対条件」と18歳の平野優芽が言うように、大きな意味を持つことはスタッフも選手もわかっていた。

 シドニー大会ではイングランド、フィジーを破り、自国開催のWSに向けて期待感があったのも事実。今大会、サクラセブンズは、直前の英連邦競技大会(コモンウェルスゲーム)で優勝したニュージーランド(総合2位)、アメリカ(同5位)、フランス(同6位)と同組と決して簡単なプールではなかった。ただ12チームで争うため、ベスト8に入るためには最低1勝し、負けたとしてもなるべく得失点差を縮めておきたかった。

若手の成長も…プレッシャーでミスが続出

ラグビー歴1年ほどで日本代表に成長した大竹風美子 【斉藤健仁】

 しかし、若手だけでなくリオ五輪組4人を含めたメンバーで臨んだ大会1日目、厳しい結果が待っていた。初戦のニュージーランド戦では開始30秒で先制トライを許して5対38で大敗。フランス戦もアメリカ戦も接点で後手に回ると5対33、17対45で敗戦。1日目は3連敗でプール4位となり、目標のベスト8には届かず、9〜12位決定トーナメントに回ってしまった。

 現在、サクラセブンズは「プレッシングセブン、トリプルアクション、フィジカルファイト」の3つをテーマに掲げる。フィジカルファイトはもちろん接点で相手に負けないこと、プレッシングセブンはディフェンスにおいて7人で立って前に出て相手にプレッシャーをかけること、トリプルアクションはアタックで倒れても起き上がってまた湧き上がるようにフォローすることを指す。

 特にこの北九州大会までの2カ月間は、アメリカ遠征などの強化合宿でボールキャリアが相手のディフェンスラインの裏に出る「ハーフブレイク」から、ボールを広く動かすアタックの練習を重ねてきた。ボールキャリアが仕掛けて相手のディフェンスを寄せてから、外に大きく展開するという狙いがあった。
 ステップとランに定評のある平野、総合力の高い田中笑伊、力強いランが持ち味であるラグビー歴1年ほどの大竹風美子ら若い力の成長や台頭もあり、アタックには自信を持って臨んでいた

 だが、地元のファンの前で、コアチーム残留のためにも「負けられない」というプレッシャー、気負いもあったのだろう、ふたを開けて見れば、ボールキャリアが前に出たとしても、相手のディフェンスのプレッシャーの前に、つなぎの部分でミス、ハンドリングエラーが続出してトライまで持っていくことはできなかった。またボール継続してもトライまで結びつけることができず、相手にカウンターや、セットプレーから少ないフェイズで取られてしまうシーンも多々あった。特に試合の序盤にトライを重ねられて試合を難しくした。

鍛えてきたフィジカルで上回られる

フランス代表戦で前進を阻まれる。外国勢にフィジカルで上回られた 【斉藤健仁】

 相手のフィジカルにやられたことについて稲田仁HC(ヘッドコーチ)は「かなり取り組んできて数値は上がってきているがゲームで生かせているかというところと、他のチームも伸びてきているのでもっと伸ばしていかないと追いつかない」と振り返った。

 また中村キャプテンは「どの試合も後半は戦えていたが、入りでボールキープできず1分以内にトライされていた。そこの部分が立て直せなかったのが原因かなと思います。2020年(の東京五輪)に向けてホームゲームを経験できるのはなかなか多くないですし、私を含めて緊張していた選手がいると思います。一段一段ずつしか成長できない」と唇を噛みしめた。

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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