W杯前年「やっとジェイミージャパンに」 ラグビー日本代表、価値ある1勝1敗
相手と競るキックを効果的に使う
HO堀江が投げ入れるラインアウトの成功率も安定していた 【斉藤健仁】
ジェイミー・ジャパンのアタックは「アンストラクチャーをストラクチャー化(陣形が崩れた局面を組織的に生み出す)」するため、コンテスト(相手と競る)キックを用いる。その中で、イタリア戦で目立ったのは、SHからのボックスキックだけでなく、自陣からSOが蹴るオープンサイドのハイパントだった。エリアも取ることができ、しっかりとWTBを競らせることができる有効なコンテストキックである。また敵陣に入ってからもキックパスやグラバー(転がす)キックでトライを演出した。
攻撃の形も変化、インサイドCTBが重要に
インサイドCTBのラファエレ(左)から、後ろに立つSO田村(右)へのパスなど多くの選択肢がある 【斉藤健仁】
インサイドCTBはSHから見て浅めに立つことで、ランもできれば、横に立っているFWにショートパスもでき(パスの後、密集で相手をスイープもする)、裏のSOにもパスが選択できる。裏のSOから見れば前のランナーがデコイ(おとり)の役割もするというわけだ。
今後、おそらく立川理道もインサイドCTBでプレーする可能性があり、ラファエレ、中村、立川とランもパスといったスキルに長け、人にも強い選手がそろうからこその戦術であろう。またSOに裏から的確な判断をさせることも狙っている。
またHO(堀江/庭井祐輔)とNo.8(マフィ/姫野和樹)は内側をえぐるように走り込む回数は減り、HOはインサイドCTBの横に3人目として立ち、No.8は大外のアタックラインに入るシーンが多かった。現に1試合目の先制トライは、CTBラファエレからFWシェイプの3人目に立っていたHO堀江へ、その堀江からSO田村へバックフリップパス、さらにアタックラインにはNo.8マフィ、FLリーチ マイケル、WTB福岡堅樹の3人のランナーがいてトライを取り切った。
第2戦ではキックの精度が落ちてしまう
第2戦の後半から出場したSH流は、素早いパスで攻撃にリズムを与えた 【築田純】
試合開始直後にオープンサイドにハイパントを蹴ったが、SO田村のキックは長くて競ることができなかった。また前半18分にはコンテストキックでもいいところを大外のWTB福岡まで回してからキックし、そのキックが起点となって先制トライを献上。22分には相手のキックに対してカウンターアタックを仕掛けたが、大外で反則し、その後のラインアウトからトライを許してしまい、ゲームを難しくしてしまった。
結局、後半もキックを蹴ったが機能せず、2試合目のキック回数は1試合目の半減の21本となった。相手のプレッシャーもあってSO田村の判断があまり良くなかったことやSH、FBも含めてキックの精度が1試合目より落ちてしまったことは今後の課題であろう。
ただ、後半から入ったSH流大、そして残り20分から入ったSO松田力也、CTB中村が短い時間の中でも機能し、3トライを挙げたことは今後の日本代表にとってはプラスとなろう。「松田、中村を入れてゲームのテンポを上げることができた。スペースに対してもアタックができた。彼らはゲームの流れを読みながら、チームを立て直すところまで引っ張ってくれた」と指揮官も目を細めた。
W杯までにどこまでチーム力を上げられるか
試合後の会見に臨むジョセフHC。さらなる強化を見据えている 【斉藤健仁】
本番まで450日あまり、テストマッチは多く見積もって15試合、スーパーラグビーも18〜20試合ほど。残り35試合ほどの中で、どこまでチーム力を上げることができるか、コーチ陣の手腕が問われることになる。ただ、6月のイタリアとの連戦で、W杯で戦うための大きな収穫を得たことは間違いない。