サンウルブズ流主将、苦悩の末の初勝利 「チームが離れそうになることも…」

斉藤健仁

今季初勝利も「ホッとしたのは一瞬です」

身長165センチと小柄だが、共同主将としてチームを引っ張っている流(中央) 【斉藤健仁】

 開幕9連敗という長いトンネルをやっと抜け出し、今季初勝利を挙げて1万2000人のファンとともに歓喜に酔いしれた。5月12日、スーパーラグビーの第13節、日本を本拠地とするサンウルブズはオーストラリアの名門レッズに63対28と快勝した。

「勝ってみなさんの前で報告できることをうれしく思います。ファンも含めて苦しい時も応援し続けてくれたおかげで、僕らもパワーをもらい、こうやって勝つことができました。サンウルブズに関わっているすべての人に感謝したい」

 試合後、まっすぐ前を見つめてこう語ったのは共同キャプテンの一人である25歳のSH流大(ながれ・ゆたか)だ。勝利直後こそはチームメイトと笑顔を見せていたが、「1勝が遠かったのでホッとしましたが、そう思ったのは一瞬です。次があることを意識しました」とすぐに厳しい表情に戻っていた。

出場経験のなかったスーパーラグビーで主将に

昨季まで出場がなかったスーパーラグビーで、主将の重責を担っている 【斉藤健仁】

 流は、昨年はサンウルブズとは1週間あまりの契約で試合出場はなく、実質、今年が初めてのスーパーラグビーだった。ただ、若手中心のメンバーで戦った昨春のアジア選手権日本代表において、キャップ0だった流をラグビー日本代表ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)がサントリーでのリーダーシップも買って、キャプテンに抜擢。

 さらに、ジョセフHCが指揮官を兼任することになった3年目のサンウルブズでもNo.8ヴィリー・ブリッツとともにキャプテンを任される。流を選んだ意図をジョセフHCは「競争心が高い選手で、賢くていいリーダーです。ラグビーの試合ではキャプテンとリーダーは本当に必要不可欠で、その任務を果たしていることは立証しているので自然と彼を選びました」と説明した。

「スーパーラグビー未経験のキャプテンはあまりいないのでは」と苦笑しつつも流は「9番のプレーをしっかりやること。そして気負わず自然体で、今まで(サントリーや日本代表で)やってきたリーダーシップをそのまま出せばいい。重圧はあるが考えすぎにやりたい」と1月末の合宿から常に声を出し、練習から全力で取り組む、いつもの姿勢でチームを引っ張っていた。

開幕戦で痛恨のミス「反省が残ります」

試合前、流を中心に全員がまとまって士気を高める 【斉藤健仁】

 ただ、そんな流は2月24日、ブランビーズを迎えた開幕戦でいきなりつまずく。19対15とリードして迎えた後半2分、流はパスをゴールポストに当ててしまい、そのこぼれ球を相手がトライを挙げて、結局、逆転負け(25対32)を喫する。「僕のパスミスで逆転されて、そのままリードできずに終わったので反省が残ります」(流)

 勝てそうな試合だっただけに、このパスミスが響いたことは否めない。そこからサンウルブズは黒星が続き、3月の南アフリカ遠征では2年連続準優勝のライオンズに2点差と善戦(38対40)したが、勝利して浮上のきっかけをつかむことができなかった。

「一番きつかったのはホームで(4月6日、13日の)ワラターズ(29対50)、ブルーズ(10対24)に負けたあたりです。やれるという実感はあっても負けが続いて、自信を失いそうになるときもありましたが、次がある、次に勝つチャンスがあると言い聞かせていました」(流)

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著者プロフィール

スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーとサッカーを中心に執筆。エディー・ジャパンのテストマッチ全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」、「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「ラグビー「観戦力」が高まる」(東邦出版)、「田中史朗と堀江翔太が日本代表に欠かせない本当の理由」(ガイドワークス)、「ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「エディー・ジョーンズ4年間の軌跡―」(ベースボール・マガジン社)、「高校ラグビーは頭脳が9割」(東邦出版)、「ラグビー語辞典」(誠文堂新光社)、「はじめてでもよく分かるラグビー観戦入門」(海竜社)など著書多数。

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