ロシアW杯で適用される3つの新ルール  テクノロジー導入で采配革命が起こる

清水英斗

W杯ロシア大会ではVARをはじめとした、3つの新しいルールが導入されることが決まっている 【写真:ロイター/アフロ】

 サッカーは新時代を迎えるかもしれない。ワールドカップ(W杯)ロシア大会では以下、3つの新しいルールが導入されることが決まっている。

(1)ビデオ判定
(2)延長戦における4人目の交代
(3)戦術的な目的で電子機器を使用可能に

VARは正しい判定を探すためのシステムではない

VARは試合結果に重大な影響を与える、明らかな間違いと見逃しに対して使用されるシステムである 【写真:ロイター/アフロ】

 VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)については、それほど多くの説明は必要ないだろう。ブンデスリーガやセリエAを皮切りに、世界中のリーグやカップ戦で導入が進んでいる。日本代表も2017年11月に国際親善試合のブラジル戦で、18年5月にはガーナ戦でVARを経験した。

 FIFA(国際サッカー連盟)によれば、VARはビデオ判定の対象場面(得点、PK、一発退場、選手誤認)における判定の正確性を、93%から98.8%に高めたとのこと。それに伴うプレー時間のロスは、1試合平均55秒。これは空費された時間として、アディショナルタイムに含められる。

 導入した際の重要なポイントは、VARの目的を理解することだ。これは決して、正しい判定を探すためのシステムではない。試合結果に重大な影響を与える、“明らかな間違いと見逃し”に対して使用されるものだ。例えば、7:3でエキスパートの意見が分かれるような場面は、ビデオ判定の対象として適当ではない。フットボールはそもそも主観的なスポーツだ。ビデオ判定を濫用すれば、より大きな混乱と、試合の停滞を引き起こす。

 この考え方はレフェリーのVARトレーニングでも重要項目とされており、同時にファンや選手、監督を含めて理解されれば、ロシアW杯でもスムーズな運用が可能になるだろう。

交代枠の追加がもたらすポジティブな変化

追加交代枠があることで、アグレッシブに攻め手を尽くすチームが増えることが予想される 【写真:ロイター/アフロ】

 そして、延長戦における4人目の交代カードについて。このルールは2年間の試験期間を経て、正式に導入される運びとなった。90分間で3人の交代枠を使い切っている、いないにかかわらず、延長戦に入ると1人の交代枠が追加される。

 これは選手の安全と負傷に対する配慮、さらにPK戦にもつれる試合を減らす意味でも、有効な改革と言える。90分で3人の交代=30分あたり1人の交代枠、と考えるなら、延長の30分で4人目の交代を認めるのは、極めて合理的なアイデアだ。また、延長戦の追加交代枠があることで、監督としても90分間で3人の交代枠を使い切り、アグレッシブに攻め手を尽くすチームが増えることも予想される。

 とかく昨今のW杯は決勝トーナメントに入ると、動きの少ない試合が増えがちだった。このルール改正は、ポジティブな変化をもたらすだろう。

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著者プロフィール

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合の深みを切り取るサッカーライター。著書は「欧州サッカー 名将の戦術事典」「サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術」「サッカー観戦力 プロでも見落とすワンランク上の視点」など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材では現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが楽しみとなっている。

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