レスターを支えるスポーツサイエンス プレミア制覇の秘訣は選手の「負荷管理」

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レスターやスウェーデン代表で活躍するスポーツサイエンティスト、ポール・バルサム氏が来日 【スポーツナビ】

 スポーツ界ではデータ活用が進んでおり、勝敗にも大きな影響を及ぼすようになっている。2015−16シーズンにプレミアリーグを制したレスター・シティでは、スポーツサイエンティストのポール・バルサム氏がカタパルト社のトラッキングテクノロジーを用いて選手の負荷を徹底管理。その結果、レスターはリーグ内で最もけがが少なく、良好なコンディションを保ち続けることができた。バルサム氏は1998年からスウェーデン代表チームにも関わっており、以後、5度のユーロ(欧州選手権)出場と、3度のワールドカップ出場に貢献したスポーツサイエンス界のトップランナーの1人だ。

 12月上旬、欧州の最前線で活躍するバルサム氏が来日。2日に行われた「スポーツアナリティクスジャパン2017」と4日に行われたカタパルト社主催の「フットボールワークショップ」に登壇し、レスターにおけるスポーツサイエンスの活用事例を解説した。

スポーツサイエンスが貢献できる理由は2つ

けがをした選手には多くの給料が支払われており、その40%以上は回避できる 【提供:Catapult Sports】

 バルサム氏によると、フットボールにおいてスポーツサイエンスが貢献できる理由は2つ。それは「けがの削減」と「パフォーマンス(フィットネス)キャパシティーの拡大」の実現が可能だからだ。

 フットボールは全速力のダッシュや方向転換、高く飛び上がってのヘディングなど、断続的に強度の高い運動を繰り返さなければならない。選手には継続的に負荷がかかり、シーズンを戦い続けることによって、それらの疲労はどんどん蓄積されていく。そして選手への負荷が高すぎる、または低すぎる状態が続くと、けがのリスクは高まる。

 プレミアリーグでは年間約3億ドル(約340億円)がけがをした選手への給料として支払われており、その約40%は「負荷管理」で回避できるのではないかと言われている。適切な負荷は選手のサイズや年齢、経験などさまざまな要素によって変化するが、そこを見極めることができればフィジカルの向上も見込めるという。

レスターが優勝したシーズンの「負荷管理」

レスターが優勝した15−16シーズン、リーグで最もけが人が少なかった 【提供:Catapult Sports】

「負荷管理」の概念自体は新しいものではなく、50年前から存在しているが、近年のテクノロジーの進化によってトラッキングできるようになり、問題への対策がより具体的に行えるようになった。

 レスターが優勝した15−16シーズンは各選手が良好なコンディションを保ったため、シーズンを通してわずか18選手しか起用しておらず、けがをした選手数がリーグで最少だった(18人。最も多かったマンチェスター・シティは69人)。バルサム氏はこのときに行った「負荷管理」の一例として、試合4日前からのスケジュール調整方法を例に挙げて説明した。

「負荷管理」は「量」と「強度」を調整して行う。レスターは試合日の3日前はオフにしていた 【提供:Catapult Sports】

 通常、シーズン中は試合日の4日前からトレーニングを行って準備を整えていくが、この年のレスターは次の試合日の3日前はあえてオフにし、その代わりに4日前と2日前にインテンシティー(プレー強度)の高い練習を行っていた。

 こういった調整がどのチームにもあてはまるわけではない。週2試合を戦わなければならない時期には使えない手法だが、当時のレスターにはこの調整が最適だった。こういった大胆な調整が可能になったことは、技術の進化と選手に掛かっている負荷を「日々モニタリングしている成果だ」とバルサム氏は胸を張る。

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