米国で動き出すミドル級頂上決戦 村田諒太の次戦は誰が適任か?

杉浦大介

ゴロフキン、ジェイコブスが続けて試合に臨む

カネロとのリマッチが流れたゴロフキン(左)は、代役となるバーネス・マーティロスヤン(右)と対戦する 【Getty Images】

 人気者サウル・“カネロ”・アルバレス(メキシコ)の薬物問題による出場停止で停滞しかけたプロボクシングの世界ミドル級戦線が、再び本格的に動き出そうとしている。群雄割拠の階級の主役たちが、2週連続で米国のリングに戻ってくるのだ。

 まずは現地時間4月28日(以下同)、昨年3月にWBA、WBC、IBF統一王者ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)に大善戦した元WBA王者ダニー・ジェイコブス(米国)が、マチェイ・スレッキ(ポーランド)とのノンタイトル戦でブルックリンのリングに登場。さらに5月5日には、帝王ゴロフキンがカネロの代役に抜擢されたアルメニア出身のバーネス・マーティロスヤン(米国)とカリフォルニア州カーソンで防衛戦を行う。

「スレッキ戦のあと、ジェイコブスには再び世界タイトルに挑ませたい。ミドル級には多くの好選手がそろっているからね」

 ジェイコブスのプロモーターを務めるエディ・ハーン氏がそう述べる通り、ゴロフキン、ジェイコブス以外にもミドル級を主戦場とする強者は枚挙に暇がない。

 4月21日には元IBF世界スーパーウェルター級王者ジャマール・チャーロ(米国)がウーゴ・センテノ・ジュニア(米国)を2回に痛烈KOで倒し、WBC暫定王座に就いた。WBO王者ビリー・ジョー・サンダースは6月23日にマーティン・マレー(ともに英国)と4度目の防衛戦を予定している。こうして同階級の王者たちが実績を重ねている中で、日本のファンの注目は、WBA同級正規王者・村田諒太(帝拳)が戦線にどう絡んでくるかだろう。

ジェイコブスは村田には興味なし?

ジェイコブス(左)は、村田戦よりもゴロフキンとの再戦へと進みたい意向だ 【Getty Images】

 最近ではミドル級の強豪を羅列する際に村田を含めるメディアも米国には少なくなく、いずれ好カード実現も期待できる。近未来のゴロフキン戦を目標に掲げる村田陣営は、米国での知名度を高めるべく、8〜10月にもラスベガスでの防衛戦を予定しているという。当面の見どころは、その相手を誰が務めることになるかである。

 村田の米国でのプロモーターを務めるボブ・アラム氏は、同じトップランク傘下のエスキバ・ファルカン(ブラジル)を村田に挑戦させたい意向を述べていた。ファルカンは2012年ロンドン五輪決勝で村田に微妙な判定で敗れた選手。プロデビュー以降は20戦全勝(14KO)と勝ち続けており、村田とのプロでの再戦を“因縁の決着戦”として売り出したいという意向だったのだろう。

 ただ、4月15日にエマヌエーレ・ブレンダムラ(イタリア)との初防衛戦をクリアしたばかりの村田にとって、トップランクが望んだ7月7日か14日という日程は早急すぎた。また、帝拳ジムの本田明彦会長は米国人選手との対戦を望んでいるという。

 今後のビッグファイト路線を考えれば、米国人、あるいは米国のリングで実績あるボクサーに勝って知名度を上げたいと考えるのは当然。だとすれば、村田の最新の“ダンスパートナー”には誰がふさわしいのか。

「村田に挑戦? 可能性がないとは言わない。ただ、現在の私たちが目指しているのはゴロフキンとの再戦か、他のチャンピオンとのタイトル戦だ」

 4月26日の会見で村田対ジェイコブスの可能性について水を向けると、ハーン・プロモーターからは気のない返事が返ってきた。スレッキに勝てばゴロフキンの指名挑戦者になるジェイコブスが、仇敵とのリマッチを望んでいるのは明白。ゴロフキン対カネロの再戦は9月に仕切り直しが濃厚とみられているが、何らかの理由で流れた場合、ジェイコブスに出番が回ってきても不思議はない。そうならなかったとしても、村田に挑むより、ジェイコブスは昨年12月にデビッド・レミュー(カナダ)に快勝して評価を上げたWBO王者サンダースへの挑戦の方に価値を見出すのだろう。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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