米国で動き出すミドル級頂上決戦 村田諒太の次戦は誰が適任か?

杉浦大介

インパクトを残すために必要な相手は?

カナダのスラッガー、レミュー(右)こそが村田のベガス防衛戦の相手には適任なのではないか 【Getty Images】

 ジェイコブス、チャーロ、あるいは元WBA、WBO世界スーパーウェルター級王者デメトリアス・アンドレイドといった米国の列強からライバルとして真剣に捉えられるためには、村田はまだ実績、知名度が不足している。

 これらのエリート選手たちと同じ舞台に立つには、やはり本場でのインパクトのある勝利が1戦は必要。今夏〜秋の防衛戦は、そのための試金石と言って良い。ここでの現実的な挑戦者候補を考えると、ウィリー・モンロー・ジュニア(米国)、ロブ・ブラント(米国)、ゲイリー・“スパイク”・オサリバン(アイルランド)、レミューといった中堅どころが最も適切ではないか。

 モンローは15年5月にゴロフキンに挑戦(6回TKO負け)、ブラントは昨年から始まったワールド・ボクシング・スーパーシリーズにスーパーミドル級で参戦し、それぞれ知名度を上げた。また、独特の風ぼうが特徴的なオサリバンは、カネロの代役としてのゴロフキン挑戦が一時は具体化したことが話題になった。これらの選手たちと村田のタイトル戦をトップランクと独占契約するESPNが全米生中継すれば、それなりの話題にはなるはずだ。

 個人的には、元IBF王者の肩書を持つカナダのスラッガー、レミューこそが村田のベガス防衛戦の相手には適任なのではないかと考えている。甘いマスクの29歳は、村田が2度対戦したアッサン・エンダム(フランス)には合計4度のダウンを奪って判定勝ちを収めた実績がある。通算38勝33KO(4敗)という強打は健在で、日本のヒーローにはリスキーなファイトではある。

ゴロフキン対村田は不可能ではない

“怪物王者”ゴロフキンとの戦いへと駒を進めるためには、村田(右)にとって次戦は今までで最も重要な位置づけの試合となるだろう 【Getty Images】

 ただ、レミューはゴロフキン、サンダースには格の違いを見せつけられた上で敗れており、これ以上の伸びしろはあるまい。村田が本気でビッグファイト戦線に躍り出たいのであれば、このくらいの相手は乗り越えねばならない。

 序盤の強打さえ気をつければ勝機は十分。人気者のレミューに勝てば、米国での知名度も跳ね上がる。レミューは5月26日にケベックで無名選手との復帰戦を予定しており、村田の防衛戦に向けてタイミングも良い。だとすれば――。

 繰り返すが、日本ボクシング史に残る重量級選手である村田は、世界的なビッグファイトにも手が届く位置にいる。最大の目標であるゴロフキン戦も、単なる夢物語だと考えることなかれ。“怪物王者”も年齢的に下り坂であること、カザフスタン出身のチャンプは米国以外での試合も辞さない選手であること、結びつきの強いプレミアケーブル局HBOが資金難であることなどを考慮しても、ESPNが主導権を握った上でのゴロフキン対村田戦の挙行は絶対不可能ではない。

 そんなドリームマッチに近づくために、村田の次戦の対戦者選び、試合内容の持つ意味は大きい。2度目の防衛戦の相手はファルカンか、レミューか、それとも他の強豪か。誰が標的になろうと、32歳の村田にとって、プロキャリアのレガシーを左右する勝負の時期が間近に迫っていることは間違いない。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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