【ボクシング】V19の豪腕・ゴロフキンが刻んだ足跡 苦戦続く中、因縁再戦で健在を示せるか

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ミドル級の3団体統一王者

世界ミドル級3団体統一王者のゴロフキン 【(C)NAOKI FUKUDA】

 160ポンド(約72.5キロ)を体重リミットとするプロボクシングのミドル級は欧米を中心に選手層の厚い階級として知られる。そんななかで7年半も世界王座に君臨し続け、19度の防衛を果たしているのがゲンナディ・ゲンナビッチ・ゴロフキン(35=カザフスタン)だ。親しみと敬意を込め、頭文字をとって「GGG(トリプル・ジー)」と呼ばれることが多い。ゴロフキンは38戦37勝(33KO)1分の戦績が示すとおりリング内では超がつくほどの強打者だが、一方で戦ったボクサーからも尊敬を集めるほどの人格者でもある。

 ミドル級のWBAスーパー王座、WBC王座、IBF王座を持つゴロフキンは5月5日(日本時間6日)、米国のラスベガスで20度目の防衛戦を行う。昨年9月に引き分けた宿敵、サウル・“カネロ”・アルバレス(27=メキシコ)との再戦である。初戦は「ゴロフキンが勝っていた」という声が多かったが、リマッチではどんな戦いを見せるのだろうか。今回は大一番を2カ月後に控えている「GGG」ことゴロフキンの足跡を紹介しよう。

史上7人目の「V20戦士」になるか

 ゴロフキンは2010年8月に決定戦を制してWBAのミドル級暫定王座を獲得した。それから正王者に昇格し、以後は無人の野をゆくかのように挑戦者たちを蹴散らしてきた。すでに在位は8年に近いところまできている。同じミドル級のWBA正規王者、村田諒太(帝拳)がロンドン五輪で金メダルを獲得したのが12年で、プロデビューしたのが翌13年。その4年後の17年に現王座を獲得したが、7年半とはこうした出来事がすっぽり入ってしまう年月なのだ。

 19度防衛の内容に関しては文句のつけようがない。まず試合地は出身地のカザフスタンのほかパナマ、ドイツ、ウクライナ、米国、モナコ、英国と幅広い地域におよぶ。相手の国籍もコロンビア、ウガンダ、日本、米国、ポーランド、オーストラリア、メキシコ、イギリス、カナダとさまざまだ。さらに打撃戦を好むファイター、距離をとって戦うことを得意とするアウトボクサーなど、どのタイプにも対応してきた。年間2試合〜4試合、比較的コンスタントにリングに上がってきたことからも分かるように、大きなケガと縁遠いのもゴロフキンの特徴といえる。

 なんといっても光るのは、17連続KO防衛を果たしたことだ。これは77年〜83年にかけてWBCスーパー・バンタム級王者だったウィルフレド・ゴメス(プエルトリコ)が樹立した世界記録に並ぶものだ。ゴロフキンの場合は選手層の厚いミドル級で成し遂げた点でさらに高く評価できる。

ゴロフキン V19の軌跡

対ミルトン・ヌニェス(コロンビア)
○1回KO(開催地・パナマ)
※WBA暫定世界ミドル級タイトル獲得 初防衛戦を前に正王者に昇格

対ニルソン・タピア(コロンビア)
○3回KO(開催地・カザフスタン)
※初防衛

対カシム・ウーマ(ウガンダ)
○10回TKO(開催地・パナマ)
※V2

対ラファン・サイモン(米国)
○1回KO(開催地・ドイツ)
※V3

対淵上誠(八王子中屋)
○3回TKO(開催地・ウクライナ)
※V4

対グレゴルツ・プロクサ(ポーランド)
○5回TKO(開催地・米国)
※V5

対ガブリエル・ロサド(米国)
○7回TKO(開催地・米国)
※V6

対石田順裕(グリーンツダ)
○3回KO(開催地・モナコ)
※V7

対マシュー・マックリン(英国)
○3回KO(開催地・米国)
※V8

対カーティス・スティーブンス(米国)
○8回終了TKO(開催地・米国)
※V9

対オスマヌ・アダマ(ガーナ)
○7回TKO(開催地・モナコ)
※V10

対ダニエル・ギール(オーストラリア)
〇3回TKO(開催地・米国)
※V11

対マルコ・アントニオ・ルビオ(メキシコ)
〇2回KO(開催地・米国)
※V12 WBC暫定世界ミドル級王座獲得 のちに正王者に昇格

対マーティン・マレー(英国)
〇11回TKO(開催地・モナコ)
※V13

対ウィリー・モンロー・ジュニア(米国)
〇6回TKO(開催地・米国)
※V14

対デビッド・レミュー(カナダ)
〇8回TKO(開催地・米国)
※V15 IBF世界ミドル級王座獲得

対ドミニク・ウェイド(米国)
○2回KO(開催地・米国)
※V16

対ケル・ブルック(英国)
〇5回TKO(開催地・英国)
※V17

対ダニエル・ジェイコブス(米国)
〇12回判定(開催地・米国)
※V18

対サウル・カネロ・アルバレス(メキシコ)
△12回引き分け(開催地・米国)
※V19
 現時点での連続19度防衛は史上7位タイ記録でもある。5月5日のアルバレス戦で勝利を収めればボクシング史上7人目の「V20戦士」となり、ミドル級ではバーナード・ホプキンス(米国)に並ぶことになる。

※世界王座 連続防衛記録
1位:25回=ジョー・ルイス(米国)ヘビー級
2位:23回=ダリウス・ミハエルゾウスキー(ポーランド)クルーザー級
3位:22回=リカルド・ロペス(メキシコ)ミニマム級
4位タイ:21回=スフェン・オットケ(ドイツ)クルーザー級
        =ジョー・カルザゲ(英国)S・ミドル級
6位:20回=バーナード・ホプキンス(米国)ミドル級

リングの中ではどう猛 リングを下りれば紳士

 ゴロフキンは1982年4月8日、中央アジアのカザフスタン共和国カラガンダで生まれた。のちのスーパースターが誕生したころはカザフスタンはソビエト連邦の構成地域だったが、91年に国家として独立している。

 アマチュア選手としてボクシングの試合に出場するようになったゴロフキンは、数々の国際大会で輝かしい実績を残した。18歳で出場した世界ジュニア選手権で優勝した翌01年には来日し、大阪で開催された東アジア大会ウェルター級で金メダルを獲得した。このとき決勝で戦ったダニエル・ギール(オーストラリア)とは、13年後にプロのリングで再び拳を交え、ゴロフキンが3回TKO勝ちを収めている。

 以後、韓国の釜山で開かれた02年アジア大会では金メダルを獲得し、翌03年にタイの首都バンコクで開催された世界選手権でも一番高い表彰台に上った。このときは1回戦でマット・コロボフ(ロシア)にポイント勝ち、2回戦でアンディ・リー(アイルランド)にポイント勝ち、3回戦ではルシアン・ビュテ(ルーマニア)に4回KO勝ちを収めている。このうちリーとビュテはプロでも世界王者になり、コロボフも世界戦を経験している。04年アテネ五輪では銀メダルに甘んじたが、準決勝では米国代表のアンドレ・ディレル(のちのIBF暫定世界スーパー・ミドル級王者)に勝っている。

 トータルのアマチュア戦績は350戦345勝5敗と伝えられる。ただし、国際試合だけでも8敗が確認されており、そのレコードの信憑性には疑問符がつく。しかし、ゴロフキンによると、アマチュア、プロを通じて一度もダウンの経験はないというから、強打だけでなく耐久力も群を抜くものがあると思われる。

 ゴロフキンは06年5月にプロに転向したが、当時はドイツのウニベルスム・ボックス・プロモーション(UBP)と契約を交わしていた。一時はビタリ&ウラディミールのクリチコ兄弟(ウクライナ)も所属していたUBPだが、その後、経営危機に陥った。それを機にゴロフキンはクリチコ兄弟が興したK2プロモーションズに移籍。そこでマネージング・ディレクターを務めていたトム・ローフラー氏とコンビを組むことになった。また、前後してアベル・サンチェス・トレーナーに師事することになり、同氏のもとでより攻撃的でスキルに富んだボクシングを身に着けたといわれる。

 38戦37勝(33KO)1分の戦績が示すとおりゴロフキンは無類のハードパンチャーで、KO率は86パーセントを超す。かつてスパーリングで手合わせした経験を持つ村田諒太(帝拳)は「左ジャブと左フックの硬さ、重さは異質のものだった。グローブで殴られているのではなく、硬くて重いものがドーンと飛んでくる感じ」と、いまはライバルの位置にいるゴロフキンのパンチについて説明している。

 試合となればどう猛なパンチを振るうゴロフキンだが、リングを下りれば温厚な紳士としても知られている。V4戦で3回TKO負けを喫した淵上誠(八王子中屋)は、「試合翌日、ホテルのロビーにいたらゴロフキンが声をかけてきて、コーヒーをご馳走してくれた。試合前も試合後の振る舞いも常に紳士的で、人格者だと感じた。ずっと勝ち続けていってほしい」と話している。

 そのゴロフキンも4月8日に36歳の誕生日を迎える。直近の2戦は小差の12回判定勝ち、12回引き分けと苦しい内容が続いている。少しずつたそがれが忍び寄っている印象があるのは事実だ。村田の言葉を借りるならば「魔法が解けた」ということになろうか。そんな中、若くて危険なアルバレスと再び拳を交えることになる。豪腕は健在なのか、それとも錆(さび)が浮いてきているのか。5月5日のリングでその答えが分かるはずだ。

Written by ボクシングライター原功
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