連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
沖縄出身・ハンドボール東江は今も成長中 東京へ、世界へ、モデルチェンジで新境地
“得点技術”を武器にリーグMVPを獲得
昨シーズンMVP、得点王、ベストセブンなど主要タイトルを独占した東江雄斗。ハンドボールが盛んな沖縄県で持ち味である得点技術が磨かれた 【写真:ロイター/アフロ】
しかし東江雄斗は少し違う。本人いわく「垂直跳びは60センチ未満だと思う」、「短距離走も学生時代からずっと遅いほう」だと。そんな東江が武器としているのは“得点技術”だ。
ハンドボールのシュートは、剛速球を投げて速さで押し切るだけでなく、モーションに変化をつけてゴールキーパーをだましたり、反応を遅らせるような技術も必要になってくる。東江は時には正攻法の速球を投げ、時には同じモーションから異なるコースを投げたり、ボールの出どころを変えたり、ゴールキーパーにシュートを取らせないテクニックに長けている。こうして社会人1年目の2016−2017シーズンに日本ハンドボールリーグシーズンMVP、得点王、ベストセブンなど主要タイトルを独占し、日本代表にも選ばれた。
東江は1993年沖縄県生まれ。沖縄は日本でも屈指のハンドボールが盛んな地域で、日本リーグの試合に3000人の観客が集まることもある。東江も含め、日本リーグの過去4年のシーズンMVPは沖縄出身の選手で占められているほどだ。
両親ともにハンドボール選手だった東江は、小学1年生から競技を始める。沖縄はハンドボールを楽しむ風土があり、自由なプレーを許されてきた。小学生がトリックシュートを試みても監督にしかられることがない。こうした沖縄ならではの競争の激しさ、遊び心が融合し、ゴールキーパーのタイミングを外す得点技術が磨かれていった。中学、高校、大学と常に日本のトップ選手として活躍し、そのまま日本リーグMVP、日本代表に選ばれた。絵に描いたようなエリート選手としての道を歩んでいる東江が、次に目標としているのは東京五輪での活躍と、海外リーグでのプレーだ。
常に課題となる海外勢とのフィジカルの差
高いレベルの海外でプレーすることについて「レベルアップのための一番手っ取り早い方法」と東江(左)は言う 【写真:築田 純/アフロスポーツ】
また日本リーグでプレーする選手のほとんどは、実業団で働く会社員。毎日の業務はあるものの、安定した練習環境が用意されている。これに対して海外リーグはレベルが高い割に報酬が決して高くないこと、プロリーグが多い欧州での言葉の問題など、移籍のハードルは決して低くない。それでも、より高いレベルの海外でプレーすることはトレーニングとして効果的であることは間違いなく、東江も「レベルアップのための一番手っ取り早い方法」と話す。東江が次の目標とする東京五輪での活躍と海外移籍の2つは、ちょうど同じ道の上にある。