沖縄出身・ハンドボール東江は今も成長中 東京へ、世界へ、モデルチェンジで新境地

吉藤宗弘

ポジションチェンジで“海外仕様”に

所属チームでも日本代表でもゲームメーカーとしての役割を担うことが増えてきた東江(手前右)。“海外仕様”へのモデルチェンジをスムーズにこなしている 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 まだ海外移籍は具体化していない東江だが、その下準備になるような大きな変化が起こっている。

 これまではLB(レフトバック)のポジションに入り、エースとして得点を取ることが最優先だったが、昨年からCB(センターバック)でゲームメーカーとしての役割を担うことが増えてきた。日本代表ではほかの優れたシューターを生かすべくCBに固定され、また所属する大同特殊鋼でも韓国代表の大型選手が加入したことでCBに入るようになったのだ。

 これは単にメンバー構成の影響で、より適性のある東江にゲームメーカーの役割が回ってきたものだが、身長182センチで世界的には小柄な部類に入る東江が、海外仕様にモデルチェンジする絶好の訓練になっている。野球で言うならば、日本の所属チームで4番を打つホームランバッターが、メジャーリーグでは1〜2番打者になったり、バスケットボールならば日本でフォワードの選手がNBAでポイントガードになったりするようなイメージだ。選手によっては伸びしろの限界が見えたり、海外移籍を断念するきっかけになるこの役割の変更を、東江は非常にスムーズにこなしている。

東京五輪までの2年半でどれだけ成長するか注目

東京五輪まで2年半。海外移籍の動向も含め、東江(左)がどのように発展、成長していくのか注目だ 【写真:ロイター/アフロ】

 日本代表のダグル・シグルドソン監督は、あまり細かい指示をしないタイプで、元々スコアラーとしての能力を評価して代表に招集した東江にも、ゲームメーカーへの役割変更について特に説明をしていないという。しかし日本代表が苦しい場面ほど東江をコートに送る采配からも、東江のゲームメーカーとしての能力を評価していることが見て取れる。

 東江は自分自身を「いろいろなことを平均点以上でこなすタイプ」と分析し、特定の能力、技術にこだわりを見せていない。現在日本最高のスコアラーながら、日本国内にも得点技術に優れた選手がたくさんいると語り、フィジカルが弱い部類に入ることを認め、ゲームメーカーとしてまだ発展途上であることも把握している。こうした柔軟性が、東江を次のレベルに導き、成長を促す源になるだろう。

 東京五輪まで2年半。東江のプレーがここからどのように発展し、フィジカル強化の結果がどのように表れるか。海外移籍の動向も含め、ぜひ注目してほしい。

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著者プロフィール

1973年石川県生まれ。東京外国語大学卒。ライター、翻訳家としてNBA、MLBなど海外スポーツを中心に執筆。自身のトレーニング経験を生かして作成に参加した「基礎から学ぶスポーツトレーニング理論」(日本文芸社)が発売中。スウェーデンのスポーツブランド「サルミング」の日本法人代表も務める。

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