芝田沙季「変わることに怖さはない」 10代の活躍目立つ卓球界で、急成長の20歳

高樹ミナ
 2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け!ニッポンのアスリートたち」。第11回は千葉県出身、卓球の芝田沙季(20歳、ミキハウス)を紹介する。

小学6年生で親元離れトップアスリートの道へ

千葉県出身、20歳の芝田沙季。わずか1年半で世界ランクを100位以上アップさせるなど急成長している 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 近年、人気がうなぎ上りの卓球は若い人材に事欠かない。まだ10代で世界を股にかけ、数々の国際大会で輝かしい成績を挙げる選手が続出。その大半は2歳や3歳の幼児期から卓球を始め、小中学生のうちに頭角を現すニュージェネレーションだ。

 そんな中、大阪府八尾市にある名門ミキハウス・スポーツクラブを拠点にワールドツアーを転戦する、現在20歳の芝田沙季は6歳になってすぐラケットを握った。今時の選手の中では遅い方かもしれないが、実家のある千葉県旭市内の卓球クラブで週6日、1日3時間の練習をこなすうち、どんどん卓球に夢中になっていった。

「始めたきっかけは卓球クラブに通っていた従兄姉の影響。はじめはついて行くだけだったけれど、球拾いをするだけでも楽しくて楽しくて」。そう笑顔で振り返る芝田は小学6年生で親元を離れ、実家から車で2時間程かかる千葉市の強豪・千城クラブに練習拠点を移した。そこで下宿生活をしながらトップアスリートになる道を歩み出したのだ。

 高校からは日本のエースで五輪メダリストの石川佳純(全農)を輩出した大阪の名門・四天王寺高校に進学。さらに高校卒業後はミキハウスに入社。石川や福原愛(ANA)とともにロンドン五輪女子団体で銀メダルを獲得し16年に現役を引退した平野早矢香ら、数々の名選手を育てた名将・大嶋雅盛監督の指導を仰ぐこととなった。

卓球漬けの日々の中で自信をなくすことも

 18年3月現在で自己最高位の世界ランク24位、日本では9位につける芝田だが、ほんの1年半前はまだ世界ランク100位に届かない無名の選手だった(16年8月時点で132位)。それが、わずかの期間で世界ランクを100位以上も押し上げ、今年1月の全日本選手権では女子シングルス6回戦で現世界ランク6位の平野美宇(エリートアカデミー)をフルゲームに追い込み、ジュースで1点を争う大接戦を演じた。結局、負けてしまったものの、平野の速い卓球についていく芝田のプレーに会場はどよめき、「芝田沙季」の名は強く印象付けられた。

「社会人1年目の16年は国際大会の出場資格を得られる世界ランク100位以内が第1目標でした。それを8月にクリアできたので(8月までの結果により9月発表ランキングで75位に)次は50位以内を目指し、一時は50位前後を行ったり来たりで停滞したものの、17年後半には30位前後まで来ることができました」と芝田。この急成長の背景には恵まれた練習環境があると本人は言う。

「私が入った当時のミキハウスには平野早矢香さんがいましたし、他にも社会人の強い選手や全国制覇を成し遂げた四天王寺中学・高校の選手もいて、常に高いレベルの練習ができました。世界を目指す緊張感ある雰囲気に自分も感化され、世界で勝つんだという意識が強くなっていったんです」

 しかし、順風満帆だったわけではない。全国の腕自慢が集まるミキハウスで、最初のうちは後輩の強い中高生に負けることもあったという芝田は、他選手との実力差を思い知らされ自信を失った。「全く勝てるチャンスがなくて、こんなんで世界を目指せるのかと不安になりました」。そんな時、救いとなったのは師の言葉だった。

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著者プロフィール

スポーツライター。千葉県出身。 アナウンサーからライターに転身。競馬、F1、プロ野球を経て、00年シドニー、04年アテネ、08年北京、10年バンクーバー冬季、16年リオ大会を取材。「16年東京五輪・パラリンピック招致委員会」在籍の経験も生かし、五輪・パラリンピックの意義と魅力を伝える。五輪競技は主に卓球、パラ競技は車いすテニス、陸上(主に義足種目)、トライアスロン等をカバー。執筆活動のほかTV、ラジオ、講演、シンポジウム等にも出演する。最新刊『転んでも、大丈夫』(臼井二美男著/ポプラ社)監修他。

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