連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
芝田沙季「変わることに怖さはない」 10代の活躍目立つ卓球界で、急成長の20歳
小学6年生で親元離れトップアスリートの道へ
千葉県出身、20歳の芝田沙季。わずか1年半で世界ランクを100位以上アップさせるなど急成長している 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
そんな中、大阪府八尾市にある名門ミキハウス・スポーツクラブを拠点にワールドツアーを転戦する、現在20歳の芝田沙季は6歳になってすぐラケットを握った。今時の選手の中では遅い方かもしれないが、実家のある千葉県旭市内の卓球クラブで週6日、1日3時間の練習をこなすうち、どんどん卓球に夢中になっていった。
「始めたきっかけは卓球クラブに通っていた従兄姉の影響。はじめはついて行くだけだったけれど、球拾いをするだけでも楽しくて楽しくて」。そう笑顔で振り返る芝田は小学6年生で親元を離れ、実家から車で2時間程かかる千葉市の強豪・千城クラブに練習拠点を移した。そこで下宿生活をしながらトップアスリートになる道を歩み出したのだ。
高校からは日本のエースで五輪メダリストの石川佳純(全農)を輩出した大阪の名門・四天王寺高校に進学。さらに高校卒業後はミキハウスに入社。石川や福原愛(ANA)とともにロンドン五輪女子団体で銀メダルを獲得し16年に現役を引退した平野早矢香ら、数々の名選手を育てた名将・大嶋雅盛監督の指導を仰ぐこととなった。
卓球漬けの日々の中で自信をなくすことも
「社会人1年目の16年は国際大会の出場資格を得られる世界ランク100位以内が第1目標でした。それを8月にクリアできたので(8月までの結果により9月発表ランキングで75位に)次は50位以内を目指し、一時は50位前後を行ったり来たりで停滞したものの、17年後半には30位前後まで来ることができました」と芝田。この急成長の背景には恵まれた練習環境があると本人は言う。
「私が入った当時のミキハウスには平野早矢香さんがいましたし、他にも社会人の強い選手や全国制覇を成し遂げた四天王寺中学・高校の選手もいて、常に高いレベルの練習ができました。世界を目指す緊張感ある雰囲気に自分も感化され、世界で勝つんだという意識が強くなっていったんです」
しかし、順風満帆だったわけではない。全国の腕自慢が集まるミキハウスで、最初のうちは後輩の強い中高生に負けることもあったという芝田は、他選手との実力差を思い知らされ自信を失った。「全く勝てるチャンスがなくて、こんなんで世界を目指せるのかと不安になりました」。そんな時、救いとなったのは師の言葉だった。