バド渡辺勇大を成長させた“2万回” 中学までは無名も、全英OP制覇

楊順行
 2020年東京五輪そして世界に向けて、それぞれの地元から羽ばたくアスリートを紹介する連載企画「未来に輝け!ニッポンのアスリートたち」。第12回は東京都出身、バドミントンの渡辺勇大(日本ユニシス)を紹介する。

格式ある全英で日本勢初の快挙達成

伝統の全英オープン混合ダブルスで優勝した渡辺勇大(右)、東野有紗組。東京都出身の渡辺は、ダブルス2種目で五輪を目指す 【写真:ロイター/アフロ】

 日本勢初の、大快挙である。

 3月18日。全英オープンの混合ダブルス(XD)決勝で、渡辺勇大、東野有紗が中国ペアを破って優勝。同ペアにとってどころか、これは日本の混合史上、初めての優勝だったのだ。全英といえば、1977年に世界選手権が始まるまで、世界一決定戦といわれた格式の高い大会。今年からレギュレーションが変わったバドミントンのワールドツアーでも、ワールドツアーファイナルズに次いでグレードが高く、世界のトップ級はすべて、ここに照準を合わせてくる。

「そういう素晴らしい大会で、素晴らしい試合ができました」

 と渡辺は誇らしげにいった。福島・富岡高を卒業し、日本ユニシスに入社2年目。日本勢初の大記録に加え、かけもち出場した男子ダブルスでも、リオ五輪に出場した遠藤大由とのペアでベスト4に進出したのだから、胸を張っていい。帰国後の記者会見では、「初めてなので、(記者・カメラの多さに)びっくりしています」と話しながら、20歳とは思えないしっかりとした受け答え。

「昨年の全英OPに初めて出場してベスト4の成績が残せていたので、相性がいい大会なのかなと思っています。優勝ができたことも、本当にうれしい。ミックス(XD)はシード選手を4回倒しての優勝なので、すごく価値があると思います。優勝してメディアの方々に取り上げてもらえることは、感動やうれしさがあります。一発屋で終わらないように、引き続きこの成績を残せるように次を戦いたいです」

 なにかいい愛称はないですかね……日本バドミントン協会の関係者に、そう聞かれたことがある。オグシオ(小椋久美子、潮田玲子組)、タカマツ(高橋礼華、松友美佐紀組)など、人気ペアほど愛称が定着するバドミントン界。渡辺、東野組を売り出すにも、耳になじむ呼び方があれば、ということだ。「“ナベヒガ”なんてどうですか」と提案したが、どうも却下されたようだ。

実った混合ダブルス強化策

全英での優勝の瞬間、倒れ込む渡辺(右)と東野 【写真:ロイター/アフロ】

 そもそも中国、韓国、インドネシアやヨーロッパ勢といった強豪に比べ、日本のXD強化は遅れを取っていた。各所属チームは男女単体で活動しており、XDのペアはそれに特化した練習は優先順位が低く、大会直前の合宿で練習するのがせいぜいだったからだ。となると、男女混合の国別団体戦(スディルマン杯、男女単複とXDの5種目で争う)ともなれば、XDはハナから計算外にならざるをえなかった。

 かくてはならじ、と協会では、XDペアの強化・育成を見すえて、昨年12月にXDペアの代表選考会を実施。さらに1月には、XD専門のコーチ、ジェレミー・ガン氏をマレーシアから招へいした。渡辺ペアはもともと、選考会前から日本代表ではあったのだが、今回の快挙は、早くもその強化策が実ったといえる。

「高校の先輩ですから、もともと仲はいいんです」と渡辺がいう東野とのペアでは、16年の日本ランキングサーキット、全日本社会人選手権で優勝。昨年は、10月まで腰痛に悩まされながら、12月の全日本総合では男子複(MD、パートナーは遠藤)との二冠を達成している。

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著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

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