日本ラグビー進化の鍵はジュニア世代 アンガスが語る「ワクワク」の大切さ
思い出に残るワールドカップのウェールズ戦
選手として日本代表で活躍し、引退後も多くのチームを指導しているマコーミック氏 【写真提供:WOWOW】
――ニュージーランド時代はカンタベリー代表で、日本に来てからは日本代表で、たくさんの国際試合を経験していますが、思い出に残っている試合を挙げていただけますか?
やっぱり1999年ワールドカップのウェールズ戦ですね。カーディフのミレニアムスタジアム(現プリンシパリティ・スタジアム)でやった試合です。ウェールズは1番から15番まで有名な選手がそろっていたし、その相手に前半は良い試合をした。前半が終わったときは15対26。「これは行けそう、勝てるかもしれない」と思いましたよ。だけど、ウェールズの後半のカウンターアタックはすごかった。
もうひとつ、すごかったのはお客さんですね。7万2000人。ニュージーランドでも5万人近いお客さんのもとで試合をしたことがありましたけど、ウェールズの7万2000人は全然違いました。何よりすごいのは歌声でしたね。となりの選手と2、3メートルのところでも声が全然聞こえないんです。いいアタックをして相手を抜いたときでも、味方がどこにサポートについているか、声が聞こえないから全然分からない。それでチャンスを生かせなかった場面もありました。すごい体験でしたよ。
――印象に残っている試合会場はほかにありますか?
日本代表で一度、ハワイでテストマッチをしたことがあります(1999年のアメリカ戦)。ハワイにはそれまで、遊びに行ったことはありましたけど、ラグビーをするとは思いませんでしたよ。
会場はワイキキに近いカピオラニ・パークで、お客さんも日本人が多かったです。練習のあとは海に入ってクールダウンしたし、ユニークなツアーでした。でも選手たちは、ラグビーパンツのまま海に入っていましたし、周りの観光客からは浮いてましたね(笑)
――ニュージーランド時代の対戦相手では。
ニュージーランドに遠征してきたスコットランド、アイルランドとカンタベリー代表で対戦しました。スコットランドには有名なギャビンとスコットのヘイスティングス兄弟がいて、僕のトイメンがスコットでした。すごくエキサイティングな試合でした。
アイルランド戦は試合もですが、アフターマッチが非常に楽しかった(笑)。クライストチャーチのランカスター・パーク(現・AMIスタジアム)で試合をした後、アフターマッチ・ファンクションで楽しく飲んだ後、アイルランドの選手たちが『もっと飲もう』、『いいところへ案内しろ』と言ってきて、クライストチャーチの町の方へ繰り出して、遅い時間まで楽しみましたよ。
もちろん試合ではお互いに勝ちたいと思って全力を出すんですが、試合が終わったらお酒を飲むことにも全力を出す。グラウンドで80分間戦うというだけでなく、そこにラグビーの文化というか、ラグビーの心があると思いますね。
あと印象的だったのはアルゼンチン。フォワードがすごかったです。スクラムでもブレイクダウンでもめちゃめちゃ激しいです。特にスクラムは世界一強かった。日本代表が1999年のワールドカップで対戦したときは、フロントローの3人をまとめてハーフタイムで交代させる作戦を使いました。それくらいフォワードは消耗して、僕はバックスで良かったと思いましたよ(笑)
日本もNZも震災後にはラグビー選手が貢献
1999年のワールドカップ、サモア戦で突進するマコーミック 【写真:築田純/アフロスポーツ】
オールブラックスはちょっと不思議なチームですね。最初のテストマッチでは、相手チームが分析して準備してくるので、相手チームが頑張って、それで良い試合になります。でも次のテストマッチになると、オールブラックスは相手がやってくることに対応して、賢いラグビーをします。対応力、学習能力が素晴らしい。
――今のオールブラックスのスティーブ・ハンセン監督はクライストチャーチ・ボーイズ・ハイスクールでアンガスの先輩ですね(8歳上)。
子供の頃からよく知っていますよ。家族ぐるみで親しかったし、1年くらい一緒に住んだこともある(笑)。オールブラックスを目指していた頃は、同じカンタベリー代表チームで、同じポジション、13番を争うライバルでした。僕が東芝府中に来てからは、ディフェンスのコーチに来てもらいました。今から25年前のこと。東芝府中の日本選手権3連覇(1996〜1998年度)は、スティーブが教えてくれたディフェンスで勝ち取ったんだよ。
そして彼の素晴らしいところは、チームの雰囲気、人間関係を良くするところ。本当に素晴らしいですよ。たとえば、ダン・カーターは世界でもトップのスキルを持っていて、コーチは何かを教えるわけじゃないけれど、スティーブはダンを気持ちよく、メンタルのいい状態でプレーさせるチームを作るんです。子供の頃からそうでした。自分が関わったどのチームも、すごく雰囲気のいい、前向きなチームにするんですよ。
――地元のクライストチャーチは、東日本大震災と同じ2011年に大きな地震に見舞われましたね。
日本では東日本大震災のとき、ピタ・アラティニやスコット・ファーディーら釜石シーウェイブスの選手たちが被災者を助けたことが話題になったけれど、クライストチャーチでもたくさんのラグビー選手が被災した人たちを助けたり、泥を掻き出したり、すごく働きました。そんなこともあって、地震の後は、ラグビーの試合でも応援がすごかったんです。
ニュージーランドでは、地元のチームがラグビーで勝つか負けるかで、地域のみんなが元気になったり元気がなくなったりするけれど、あのときのクルセイダーズは思うように練習できなかったり、スタジアムが使えなくなったりした中で、すごく頑張っていました。チャリティー活動もたくさんしていました。
だから、昨年のスーパーラグビーで久しぶりにクルセイダーズが優勝したときは、カンタベリーの人たちがものすごく喜んでいた。日本の東北も同じだけど、震災の被害を乗り越えて、前へ進んでいこうとしている。それをずっと継続している、立ち止まっていないですよね。素晴らしいことですよ。
「日本のラグビーをどのレベルでも応援したい」
日本代表、サンウルブズの今後を「すごく楽しみ」と語る 【写真:築田純/アフロスポーツ】
良い感じで来ていると思うよ。昨年(2017年)の1年間にすごく良くなりました。特に、フランスと引き分けた試合はすごく良い出来でした。
今年どうなっていくか、すごく楽しみですね。サンウルブズも面白い存在ですよね。日本代表のスタッフが選手を良く見ることができます。トップリーグの試合だけではなく、強い相手とタフな環境で試合をする、試合だけではない姿を見られますからね。
ヘッドコーチのジェイミー・ジョセフも良い人間関係を作ることが得意ですし、日本代表の選手が一緒にいられる時間を増やせたことはとてもポジティブなこと。ワールドカップはもう来年ですし、グラウンド以外の時間を増やすのはとてもいいことだと思いますよ。
――アンガスにとってはジェイミーも長い付き合いですね。
ニュージーランドにいた頃は僕がカンタベリー、ジェイミーはオタゴで、敵同士だったけど、1999年には日本代表で一緒に戦いました。当時からリーダーシップがありましたね。彼のいいところは分かりやすいこと。白と黒がはっきりしているから、選手もやりやすいでしょうね。人間関係も同じで、複雑なマネジメントはしないで、シンプルに作っていく。面白いよ。
――アンガスはこれからどうラグビーに関わっていきたいと思っていますか?
僕は25歳までニュージーランドにいて、日本に来てから25年になりました。人生の半分は日本で過ごしていることになりますね(笑)。日本のラグビーをどのレベルでも応援したいと思っています。日本代表、サンウルブズはもちろん、大学も高校も、子供のラグビーもお手伝いしたいですね。
特に教えたいと思っているのはジュニアレベル。具体的には中学生レベルですね。この年代の子供たちに『ラグビーをやりたい』、『ラグビーが楽しい』という気持ちになってほしい。毎朝、起きるときに『今日もラグビーをやりたい!早くスパイクをはきたい!』という気持ちになってほしい。『今日はラグビーの練習ができるぞ。うれしい!』というワクワクした気持ち。僕が育ったニュージーランドにはそれがあったし、それがオールブラックスの強さを作っています。その感覚を、小学生や中学生が持ってくれたら、日本のラグビーはもっともっと良くなると思っています。
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