連載:未来に輝け! ニッポンのアスリートたち
芝田沙季「変わることに怖さはない」 10代の活躍目立つ卓球界で、急成長の20歳
目の前の結果ばかりでなく先を見て考える
四天王寺高、ミキハウスとトップチームに所属。実力者たちが集まる環境に、自信を失った時期もあった 【高樹ミナ】
「今、勝てないとかできないとか目の前に見えていることばかりでなく、先を見て自分が何をしなければならないのかを冷静に考えることだ」
もともと脇目も振らず突き進む性格の芝田はそれが長所でもあるのだが、ややもすれば盲目的になる傾向がある。例えば試合中も一つのプレーに固執しすぎて融通が利かず、「攻めると行き過ぎるし、守ると守りっぱなしで柔軟性がない」と本人もそれを認める。この芝田の性質を踏まえて大嶋監督は、もっと視野を広げ柔軟になることを命じたのだ。
さらにミキハウスの大先輩で、芝田が卓球人として尊敬してやまない平野の指導も彼女を大いに変えた。目の前の結果に振り回され練習に集中できない芝田に対し、「本来の目的がブレて変わってきてしまっている」と指摘。上のレベルへ行くために何をしなければならないのかを自分で徹底的に考えることを課したという。
他コーチも含め、師の教えをコツコツと実践していった芝田は着実に変わっていった。最も変わったのは、「以前は言われることを忠実にやるだけだったが、今はコーチと意見を交わせるようになって、練習内容も自分から提案できるようになったこと」と芝田は言う。そうすることで本当に必要な練習を自分の感覚を大事にしながらできるようになり、実力の向上につながっていったのだ。
変化なくして進化なし。まだ伸びしろはある
実際、飛躍を遂げた17年シーズンは、それまで防戦一方だったバックハンドでコースを打ち分け、チャンスメークしたボールで攻めに転じる器用さが出てきた。また、サーブレシーブからの攻撃の幅もだいぶ広がり、先手を取れるようになった自信からか、ワールドツアーでは世界ランク上位で五輪メダリストでもあるフェン・ティアンウェイ(シンガポール)を初めて倒す一戦もあった。「その3カ月前に対戦した時はストレート負けで、勝てるイメージが全くなかった。この勝利で世界が見えた気がした」と芝田。これが引き金となり17年ワールドツアーでは女子シングルスで2度目の優勝、U21の部で3勝の好成績を挙げている。
そんな彼女の目下の課題は戦術の使い方とひらめきだそう。対戦相手をじわじわと追い詰める粘り強さと苦しい局面を切り抜ける諦めない姿勢には定評がある。「あとは試合の大事な場面で柔軟に戦術を使い分け、もっと勝負に出られるようになれば」と本人。
10代の選手が勢いづく日本の卓球界にあって、20歳になったばかりの自分にもまだまだ伸びしろはある。絶対に勝ってやろうという気持ちで、「2020年東京五輪の代表権を勝ち取りたい」と芝田は燃えに燃えている。五輪日本代表の切符はわずか3枚。代表選考が本格化する18年の目標はずばり、日本人トップ3に食い込むことだ。芝田の負けられない挑戦は2020年に向かって加速していく。