「陸上人生が変わった」躍進の17年 男子短距離・多田修平インタビュー

構成:スポーツナビ

2017年、男子短距離陣の中で大きな飛躍を見せた多田修平にインタビュー 【スポーツナビ】

 2017年の日本陸上男子短距離は、過去にないほどレベルの高い争いが繰り広げられた。その結果、8月の世界選手権(イギリス・ロンドン)では、4×100メートルリレーで銅メダルを獲得し、その真価を証明した。また9月には、悲願だった日本人初の9秒台を桐生祥秀(東洋大)が記録し、「10秒の壁」を突破して新時代に突入したと言っても過言ではないだろう。

 その中で主役の1人に躍り出たのが多田修平(関西学院大)だ。シーズン序盤では知る人ぞ知る選手だったが、一躍脚光を浴びたのが5月のセイコーゴールデングランプリ川崎。世界選手権で金メダルを獲得することになるジャスティン・ガトリン(米国)を隣に、見事なスタートダッシュを決めると、途中までガトリンやケンブリッジ飛鳥(ナイキ)を先行するレースを見せ3位に入った。

 その後も日本学生陸上競技個人選手権で、追い風参考ながら国内競技会では初となる9秒台(9秒94、追い風4.5メートル)を記録し、6月の日本選手権では、同じく17年に大躍進を見せたサニブラウン・アブデル・ハキーム(フロリダ大)に次ぐ2位に入って、世界選手権の個人戦出場を決めた。

 今回は新シーズンに向けてのトレーニングを積んでいる多田に、17年の振り返りと今後の目標などを聞いた。

「10秒0台が出るとは思っていなかった」

自分自身でも10秒0台のタイムには驚いていると話す多田。そこから陸上人生が変わってきたとも話す 【スポーツナビ】

――陸上をやっている人には16年に10秒25を記録し、名前が出てきたと思います。ただ、まだ世間一般ではなく一気に周りの状況が変わったのが17年だと思います。改めて17年を振り返って、どんなシーズンでしたか?

 17年の春は、それほど注目されていない時で、「世界選手権のリレーメンバーを狙えれば」という気持ちで挑んでいました。ですが、5月のゴールデングランプリでガトリン選手を先行できて、そこから自分の陸上人生が変わってきたかなと思います。注目されるようになって、そこから目標が少し変わり、世界選手権を個人で、日本代表として狙っていこうという気持ちに変わっていきました。

――自分で予感はあった?

 やっぱり10秒0台(※6月10日の日本学生陸上競技個人選手権決勝で10秒08を記録)が出ると思っていませんでした。その10秒0が出る前が9秒台(※準決勝では追い風参考で9秒94)だったので、一番驚きました。(4月の)織田記念国際では桐生さんに大差で負けている(※決勝で桐生が10秒04。多田は10秒24で2位)ので、やっぱりここまで良くなるとは思わなかったです。

――この活躍を予言していた方はいましたか?

 それほど(笑)。「強くはなる」と言ってもらえていたのですが、10秒0台を出して世界選手権に行けるまで想像していた方はいなかったんじゃないかなと思いますね。

目の前で9秒台を出され悔しさも

自己ベストを記録したが、それでも目の前で9秒台を出された日本インカレは悔しいレースだった 【写真は共同】

――17年で印象に残っているレースはありますか? いい意味と悪い意味で言うと?

 いい意味で印象に残っているのは、個人のレースではないのですが、世界選手権で銅メダルを取れたレースです。昨年で一番うれしかったですね。いい経験にもなりましたし、世界選手権の100メートルに初めて出場し、準決勝にまで行けたので、それも自信にはつながったと思います。

 悔しかったレースは目の前で9秒台を見てしまったレース(9月の日本インカレ決勝)なのですが、やっぱり結構大差が付いてしまったので。約0秒1近く空いて負けた(※桐生が9秒98で1位、多田は10秒07の自己ベストで2位)ので、まだまだ力が足りないというのを見せ付けられた試合で、もっと頑張らないといけないと思い知らされた試合でした。

――レースの内容自体は?

 前日、動いていてあまり良くない状態だったのですが、やっぱり好条件の中で走れたので、10秒07も自分の実力ではなく、好条件の中で出た10秒07だと思っています。そこはもっと力を付けて、10秒07の次は自分の中では9秒台だと思っているので、そこは頑張っていけたらいいなと思いました。

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