「陸上人生が変わった」躍進の17年 男子短距離・多田修平インタビュー

構成:スポーツナビ

変わるきっかけとなった「夢プロ」

自ら関西学院大を選んで入学し、大学で積むトレーニングは自分の成長に生かされている 【スポーツナビ】

――17年に飛躍したきっかけについてですが、大阪陸上競技協会による「OSAKA夢プログラム」の活動は大きかった?

 そうですね。関西学院大の練習も自分のためにはなっているのですが、やはり大阪陸協が支援してくれたプログラムのおかげで合宿などに行かせてもらい、そこでコーチして下さった先生に合宿中はいつも見ていただいて、補強の仕方や、自分にあったメニューを出して下さるので、そのメニューを継続したおかげで、いい形で筋肉も付いていったと思います。また海外にも行かせて頂いていますが、米国やオーストラリアで多くの経験を積ませてもらいました。アサファ・パウエル選手(ジャマイカ)やお兄さんのドノバン・パウエルさんにウエイトとかスタートについて教えて頂き、いろいろな技術を身に付けることができたと思います。

――その教えで走りが変わった?

 変わりましたね。やっぱり自分の走り方の基礎は一緒なのですが、腕振りを変えたりして、自分の走りが変わっていきました。

――関西インカレのレースを見ているのですが、1年生、2年生の頃に比べると、腕振りがきれいになりましたよね。

 1年、2年の時は左腕が左にスライドするような腕振りで、少しワキが空いてしまうような感じでした。それが無駄だと合宿を通じて言われて、まずはそれを直し、1歩1歩強い蹴りができる腕振りに変えようと言われました。開いてスライドしてしまうというのはは日常からのクセなので、それを日ごろから意識して歩いたり、考えながら過ごしていました。

――「夢プロ」についてはほかの競技のメンバーも集っての合宿だったと思います。短距離だけでなく、いろいろな競技のレベルの高いメンバーが集まる環境というのはどうですか?

 僕はどちらかというと、1人でやるよりみんなで練習をする方が好きです。1人だとしんどい時はしんどいですし(笑)。僕は楽しく練習したい方なので、みんなとやると楽しいですし、あとはほかのトップレベルの選手がどういう風に考えているかとか、練習の時にどういうことを意識しながらやっているのかとか、共有できたりできるので、それがみんなでやるメリットかなと思います。

経験を積むことが本場で力を出す秘訣

世界選手権ではウサイン・ボルト(左)とも一緒に走った 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

――8月の世界選手権についてはいかがだったでしょうか? 個人戦では準決勝に勝ち進みましたが、予選よりタイムが落ちたりと、力を出し切れなかった部分もありましたか?

 本番で力が落ちたというか、最大の力が出せないという場面がたくさんあって、予選より準決勝でタイムが落ちているのは、そこが僕の本番の弱さなのかなと思っています。そういう大きい舞台でも自分の力を最大限に発揮できるような力を身に付けていきたい。それには経験が必要だと思いますが、その経験をしっかり身に付けていけたらいいなと思います。

――日本選手権で2位になれたのは、前年に日本選手権を経験していたからというのも大きいですよね。

 日本選手権も初めて出場した時は自分の力を発揮できずに、10秒50で準決勝で敗れていました。初めて出場した試合に弱くて、2回目は経験を積んでいるので、いい結果を残せています。やっぱり経験を積むことが本番で力を出せる秘訣なのかなと思いますね。

最終目標は「海外からも注目される選手」

「2020年は個人でメダルを」と目標を掲げる多田。残り2年で世界のトップと戦える力を磨いていく 【スポーツナビ】

――18年にはアジア大会(インドネシア・ジャカルタ)があります。その次の年には世界選手権ドーハ大会、そして20年には東京五輪を迎えます。今、自分が想像する中で、20年にはどんな多田修平がいると思いますか?

 やっぱり2020年は、個人でメダルを。東京五輪で銅メダル以上を獲得できるような選手にはなりたいです。そういう選手を目指しています。

――そのために今から何をしていこうと思っていますか?

 今年は筋力が全然ないので、それを増やすためにトレーニングしています。それ以降は、また新しいシーズンが終わってみてからプランを立てる予定です。

――記録で言うとやはり9秒台というのが願望でなく、出すという感じ?

 今年はいい感じで練習もできているので、本当に出せると思っています。

――昨年の「アスレティックス・アワード2017」では新人賞と、ファン投票で2位を獲得していますよね。その結果はうれしかったですか?

 うれしかったですね。一般のファンの方が選んでくれたものだと思いますが、僕に注目して下さっているのだと思うので、その分、頑張ろうという気持ちにもなりますし、期待に応えたいと思っています。

――日本だけでなく海外のファンも作れたらいいですね。

 それには9秒8台、9秒7台を出さないといけないし、世界大会でメダルを取らないといけないと思うので、最終目標はそれですね。

――来シーズンについてですが、桐生選手も9秒台を出して開放感もあると思います。またケンブリッジ選手、サニブラウン選手、山縣亮太選手(セイコー)も次を狙ってくると思いますが、多田選手も周りからの期待に応えるべくメンタルの強さを試されるかと思います。本当にこのメンバーがそろって走るのは面白そうですよね。

 そうですね。切磋琢磨(せっさたくま)できるので、楽しい面もありますし、怖い面もあります。その中で自分自身は楽しめたらいいなと思っています。周りは気にせず、自分を出していきたいです。

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