プロデビューから2年半、際が感じた成長 トゥエンテとの再戦で得た自信と伸びしろ

中田徹

成長を実感するも、新たな欲望が生まれる

敗戦にも、際は自身の成長に手応えをつかんだ 【Getty Images】

 試合は前半33分にカンブールが鮮やかなカウンターを決めて先制したが、後半に入ってからトゥエンテが3点を固め取りし、終わってみれば3−1でホームチームの快勝に終わった。中でも美しいFKと、パンチのあるミドルシュートを決めたアダム・マヘルの活躍が光った。

 際は「カップ戦は一発勝負でロマンがあります。取りたかったです。もったいなかった」とベスト8敗退を悔しがった。この試合、彼にとってのもう1つのテーマ、「コロナとマッチアップしたデ・フロルーシュ・フェステでのデビューマッチから2年半、自身の成長をどう見るか」について、際に問うた。

「2年半前とは全然違いますね。一番大きいのはメンタル面。スタジアムとかサポーターとか、いい緊張はもちろんありますよ。でも変な緊張は全くなく、僕は落ち着いて試合に挑むことができました。今日はボールをもらってさばくというより、(守備的戦術で)受け身でしたが、やはり、2年半前に比べたら選手としてはよくなっていると思います」

 ドルトレヒト時代の際は、良いプレーをした試合でも、失点に直結しそうなミスもあった。それがカンブールに来てからは消えた。

「普通に落ち着いてやれています。でもトゥエンテを見ると、『(オランダらしい攻撃的な)サッカーがやれて楽しいだろうな』という感じがあります。ジュピラーリーグのレベルなら、カンブールもサッカーをやれるのでいいのですが、やっぱりこれくらいハイテンポなサッカーをしたいという欲望が生まれます」

 際がピッチの上で感じたトゥエンテの「ハイテンポなサッカー」とは何だろうか。

「トゥエンテは、前のスピードのギアの上げ方がうまい。だけどトゥエンテはFW(2トップ)が走ってトップ下も走って、裏に抜けていく選手がすごく多いから、どうしてもカンブールのDFは下がってしまう。そこでうまくアサイディが止まって、足元でボールをもらってドリブルで抜けて、そこからまたオーバーラップしてくる選手に出す。こうして、トゥエンテは前線に関わる人数がすごく多かった。それに比べると、カンブールはボールを持っても、前に行く選手が少なかった」

1部でやれる自信が付いた

1部でやれる自信が付いたという際は、カンブールでアピールを続ける 【Getty Images】

 2年半前に比べると成長に手応えをつかんでいる際だが、さらなるステップアップを目指すためには、この試合はスカウトへのアピール不足に終わった。

「本当は今日の試合でもっとバンバンやりたかったけれど、こういう結果になってしまいました。そこが悔しいです。だけど、僕たちの試合はエールディビジのクラブがたくさん見に来ていると聞いています。やり続ければ、おのずと移籍の話も来ると思う。監督、TD(テクニカルディレクター)を含めて、みんな僕のプレーには満足しているという話を聞いています。監督も冬のキャンプ中にそういう話をしてくれた。自信をもって、このままやり続けるだけだなという感じですね」

 今日やってみて、1部でやれる自信は?

「付きました。サッカーが、このテンポでもっとやりたいと感じました。2年半前の僕だったら付いていくのがやっとでしたが、今はそうじゃない。夏にAZの練習に参加したことも含めて、その環境でやれば伸びるし、絶対にできる自信もあるのでやりたいです。分析担当者も『ドルトレヒトのときより体力面がかなり改善されている』と言っていました。ドルトレヒトからエールディビジに向けて、いい具合に1つクッションを踏んでいます」

 そして、際は続ける。

「課題は全部です。ここがゴールではないし、エールディビジもゴールではない。もっと上を目指すためにも、全てを上げていかないといけない。まだまだ伸びしろはある。いや、伸びしろしかない」

 今、カンブールは11位と不本意な成績だが、1部・2部の入れ替えプレーオフは2部リーグから8チームも参加できる上、ヨング・アヤックス、ヨングPSVなどリザーブチームには資格がない。つまり、カンブールにも一発逆転のチャンスは残っている。レギュラーシーズンは残り16試合、際とカンブールの奮闘に期待したい。

2/2ページ

著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント