サッカーと野球~プロスポーツにおけるコンバートの意義

コンバート成功者ランキング【ワールドサッカー編】 代表格は「世界屈指のレジスタ」

吉田治良
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R・マドリーに一時代を築いたS・ラモス(右)とベイル(左)も代表的なコンバート成功例だ。もし、この2人が左右のサイドバックにいたら……相当な破壊力だっただろう 【Photo by David Ramos - FIFA/FIFA via Getty Images】

 きっかけや理由はさまざまだろうが、いずれにしても本職とは異なる不慣れなポジションで、しかも欧州のトップレベルで成功を手にするのは簡単ではないはずだ。ここに挙げたのは、コンバートによってレギュラーの座をつかみ取った者、さらにはワールドクラスへと羽ばたいた者たち。サッカー界のコンバート成功者ランキング、その海外編としてトップ10の顔ぶれを紹介する。
★=現役選手

分かりやすい成功例は減少傾向に

 戦術の高度化に伴い、近年のサッカー界、とりわけ欧州のトップレベルでは一人二役、さらには一人三役をこなせるマルチロールプレーヤーも珍しくなくなった。

 また稀代のイノベーター、ジョゼップ・グアルディオラによって、「ゼロトップ」「偽サイドバック」「偽センターバック」といった新たな概念が次々と生み出されたことで、ポジションの境界線もひと昔前に比べるとかなり曖昧になっている。「コンバート」の分かりやすい成功例が減少傾向にあるのも、そうしたことが大きな理由だろう。

 ここでは「世界のコンバート成功者トップ10」を紹介するが、上記のような流れを汲んで、元々ユーティリティー性に富んだ万能型のプレーヤーは対象外とした。例えば、ペップ時代のバイエルンで「偽サイドバック」の役割を与えられたダビド・アラバ(現レアル・マドリー)、セントラルMFが本職ながらリバプールでは左サイドバックもハイレベルにこなしたジェームズ・ミルナー(現ブライトン)などがそれに当てはまる。

 また、本来はセンターバックだが、今や世界屈指の右サイドバックと呼ばれるまでとなったバルセロナのジュル・クンデのように、故障者続出のチーム事情から、本人が望まない形で配置転換を余儀なくされたケースも、基本的には除外している。

10位:ジョエリントン(ニューカッスル/ブラジル代表)★

 2019年夏に当時のクラブ史上最高額(4350万ユーロ)でホッフェンハイムから移籍してきた当初、ジョエリントンは期待の若手ストライカーとして評価されていた。

 しかし、なかなかゴールという結果が出ないと、21年11月に就任したエディ・ハウ監督によってインサイドハーフにコンバート。すると、186センチ・81キロという恵まれた体格を生かしたボールキープから攻撃のスイッチを入れるだけでなく、ときにアンカーも務めるなど守備面でも貢献し、文字通り新境地を切り拓いている。

 決して器用なタイプには見えなかっただけに、中盤で攻守にわたって機能していること自体が驚きだった。今季開幕戦でもゴールを奪ったように、センターフォワードらしい得点力は健在だ。他の9人と比べれば知名度も実績も劣るが、近年の分かりやすい成功例としてランクインさせた。
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著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

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