今季のJはタイの“ビッグ3”に注目 万能型FWと「悪魔の左足」を持つ男が加入
札幌の救世主となったチャナティップ
チャナティップの活躍により、タイ人選手に対するJクラブの関心が高まっている 【写真:アフロスポーツ】
最も大きな期待を背負ってやってきたのがチャナティップで、Jリーグ最初のシーズンで見せたパフォーマンスは、その期待に応えるものだった。加入直後からスタメンに定着し、残留争いを演じていたチームに欠かせない選手として活躍。ゴールこそ挙げられなかったものの、その存在感は大きく、同じく後半戦から加入したジェイとともに札幌の救世主となった。
「提携国枠」の影響で、タイ人Jリーガーはさらに増加
すでにサンフレッチェ広島がタイ代表のエースであるティーラシン・デーンダーの獲得を発表し、セレッソ大阪も提携を結ぶバンコク・グラスからU−23タイ代表MFのチャウワット・ヴィラチャードを1年間の期限付きで獲得。さらに、タイ代表の左サイドバック(SB)を務めるティーラトン・ブンマタンのヴィッセル神戸加入も確実な状況で、今季のJリーグでは、昨シーズンよりもさらに多くのタイ人選手がプレーすることになる。
東南アジア最高の万能型FWティーラシン
広島に加入するティーラシンは「東南アジアのナンバーワン選手」と評され続けてきた 【Getty Images】
タイ代表の10番を背負うティーラシンは、「東南アジアのナンバーワン選手」と評され続けてきた29歳のFW。正確な足元のテクニックに加えて、181センチの長身とスピードも兼ね備えており、多彩な得点パターンを持つ。ポストプレーがうまく、周りを生かすこともできる万能型ストライカーだ。
19歳でタイ代表デビューし、現在まで91試合で42得点。14年にはスペインのアルメリア(当時1部)に移籍し、リーガ・エスパニョーラ初のタイ人選手となった。タイリーグでも通算100ゴールを超え、同リーグのタイ人最多得点記録保持者でもある。名実ともにタイでは別格な存在であり、チャナティップが本格的に台頭するまでは、彼を「タイのベストプレーヤー」と評することに異論をはさむ者はいなかっただろう。
ティーラシンの存在は、タイリーグでプレーするJリーグ経験者にも強いインパクトを与えてきた。タイでプレーする日本人選手のパイオニア的な存在の1人だった丸山良明(元横浜F・マリノスほか)は、当時20代前半だったティーラシンを「スピードのある前田遼一(FC東京)のよう」と表現した。さらに、昨季までチームメートだった青山直晃も「タイにこんな選手がいるのかと本当に驚いた。ほとんど完璧な選手」と賛辞を惜しまない。
その実力がJ1レベルでも通用することは、昨季のACL(AFCチャンピオンズリーグ)でも証明された。グループステージでは日本で行われた鹿島アントラーズ戦で一時同点となるゴールを決め、決勝トーナメント1回戦の川崎フロンターレ戦では第1戦、第2戦と連続得点。試合後、タイのメディアから「チャナティップ以外で印象に残った選手は?」と尋ねられた川崎の鬼木達監督は即答でティーラシンの名前を挙げていた。