チャナティップ「日本はプロ意識が高い」 “タイのメッシ”が初シーズンを振り返る
タイの英雄であるチャナティップに、Jリーグで過ごした最初の半年間を振り返ってもらった 【スポーツナビ】
現在24歳というタイの期待の星は、初めての海外移籍で何を感じたのだろうか。「憧れだった」というJリーグでプレーをしてみての印象、タイと日本のサッカー文化の違い、そして残りの契約期間での決意をシーズン終了後の帰国当日に聞いた。(取材日:2017年12月9日)
チームの役に立つことができた
はじめて日本に来たのは1月の移籍発表会見のときでしたが、7月にあらためて札幌に来てみるとチームは15位前後だったと思います。まず当面の目標はJ1残留でした。
最初は試合に出られるのか出られないのかも分からない状態で日本に来ましたが、一生懸命努力をして、監督に信頼していただいて試合に出られるようになったことはよかったと思います。
少しはチームの役に立つことができたのかなと、自分でも誇りに思っています。でも今後はもっと、自分のためにも強くならなければいけません。
――Jリーグに移籍してきた当初は、どのような思いで移籍してきたのでしょうか?
Jリーグでプレーしたいとずっと思っていました。それが実現できて、自分でもとてもうれしい出来事でした。代表戦やAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも日本とよく戦っていましたが、日本のチームはいつもシステムがしっかりしていて、好印象を持っていました。
実際にプレーしてみると、タイとは完全に違う環境ですし、フォーメーションやシステムも全く違いましたが、少しずつ日本のサッカーになじんでいけるように頑張っているところです。
――タイから日本まで応援に来てくれるファンの方も多いと聞きましたが。
そうですね。日本でプレーをしていても、タイでたくさんの方が応援してくれているというのはとても感じます。SNSでもそうですし、家族とは毎日やり取りをしているので、話を聞いたりもします。
――今季Jリーグでプレーしてみて感じた課題はありますか?
私自身、もっと自信を持たなければいけません。特にゴールへの執着心や、シュートの部分です。今季はまだ気を使ってしまう部分があり、自分でシュートを打っていいのか迷うシーンもありました。来シーズンはもう少し自信を持って、積極的にプレーできればいいかなと思います。
――逆に手応えを感じた面は?
相手の守備が自分のマークに集まってくるようになったので、周りの選手のスペースが空き、プレーしやすい状況を作り出すことができていると最近は感じます。
タイはプロ意識が欠けている
守備を求められるプレースタイルは「新しいチャレンジ」とチャナティップ 【(C)J.LEAGUE】
予想はしていましたが、プレースタイルは試行錯誤しました。たとえば、タイでは完全にアタッキングMFでしたが、日本に来てからはディフェンスもしっかりやらなければいけませんでした。自分が予想していたよりも、守備を求められたので、その部分は新しいチャレンジになりました。
――タイリーグとJリーグで一番違いを感じる部分はどこでしたか?
まず、タイにはプロ意識というもの欠けていると感じています。個々の選手のストイックさが少ないですし、全体的にすごくゆるいというか、時間もルーズです。
またプレー面でも、日本では守備を必ず全員で徹底してやらなければいけないですが、タイはバラバラでやったりやらなかったりです。日本の方が守備におけるプレッシャーは厳しいと思います。
――札幌でプロ意識を感じたシーンは?
たとえば札幌では練習の1時間前にはみんな集まってきますが、タイでは遅れて集合することが多いです。また、日本は自分の体調を自分で管理していますし、チームメート同志でサポートし合ってノウハウを共有したりもしています。
――1番印象に残った対戦相手はいますか?
やはりJ1リーグを優勝した川崎フロンターレですね。ボールをしっかりつないで、攻撃に特徴があるチームです。対戦していて本当にうまいなと感じました。もともと知っていてあこがれている中村憲剛選手や、小林悠選手、さらにはエウシーニョ選手などタレントもそろっている印象です。
――最も印象に残った選手は?
中村憲剛選手ですね。タイにいるときから知っている選手でしたが、実際に対戦してみて非常にうまいなと感じました。全てのプレーの質が高かったです。
実際に会った際には、「チャナティップー!」と向こうから声を掛けてくれたのも非常にうれしかったですし、試合後にはユニホームを交換して写真も撮ってもらいました。中村選手のツイッターでそれを投稿してくれているのも見て、とても感動しました。
――Jリーグに来てほしいタイ人選手はいますか?
ムアントン・ユナイテッドのティーラシン・デーンダー選手ですね。ムアントンとタイ代表で一緒にプレーしているのですが、タイで最高レベルのストライカーです。日本でも十分に通用する実力を持っている選手だと思います(編注:19日にサンフレッチェ広島への加入が発表された)。