札幌加入の「タイのメッシ」にかかる期待 能力は折り紙つき、J1で輝けるか

本多辰成

ルヴァンカップでJリーグ公式戦デビュー

チャナティップはルヴァンカップのC大阪戦でJリーグデビューを飾った 【(C)J.LEAGUE】

 北海道コンサドーレ札幌に加入した「タイのメッシ」ことチャナティップ・ソングラシンのJ1デビューが近づいている。7月26日のルヴァンカッププレーオフステージ第2戦、セレッソ大阪戦で後半から出場して公式戦デビュー。29日のJ1第19節・浦和レッズ戦でタイ人選手として初のJ1リーグ出場を果たす可能性は十分だ。

 C大阪戦では早坂良太に代わって後半から投入され、45分間プレー。日本のピッチでも持ち味を十分に表現し、複数の好機を演出した。後半戦、J1残留を目指す札幌の貴重な戦力となりそうな予感を大いに感じさせる公式戦デビューだった。

 6月20日に来日し、すでにチームに合流して1カ月が過ぎた。その間、トレーニングマッチや親善試合でも実力の片りんを見せてきた。7月9日に行われたJ2・町田ゼルビアとの一戦では、持ち前のスピードで抜け出し、MF前寛之とのパス交換から初得点をマーク。22日にタイで行われた古巣のムアントン・ユナイテッドとの対戦では、札幌の一員として出場した前半は2シャドーの左に入って攻撃を活性化させていた。

 2012年にJリーグが「アジア戦略」をスタートさせて以来、複数の東南アジア出身のJリーガーが誕生した。水戸ホーリーホックはベトナム人のグエン・コンフォンを獲得したことによって、ベトナム航空をスポンサーにつけるなど、ビジネスにおいては一定の成果を見せた。だが、プレーの面で確かな足跡を残す選手はまだ現れていないのが現状だ。

 チャナティップはその状況を打破する可能性を大いに秘めている。数シーズンにわたってマークした上で獲得を決断したという札幌の三上大勝ゼネラルマネージャー(GM)も「レギュラークラスの戦力と確信している」と語っており、チャナティップは札幌をJ1残留に導く切り札として期待されている。

ACL3試合でマン・オブ・ザ・マッチの実力

ACLなどの実績を見ても、能力的にはJ1で輝ける水準にあることは疑いようがない 【Getty Images】

 昨年から今年にかけて、チャナティップの日本での知名度は急上昇した。リオデジャネイロ五輪、ワールドカップ・ロシア大会と、タイはアジア最終予選で立て続けに日本と同グループで対戦。さらに、今季はムアントンの一員としてAFCチャンピオンズリーグ(ACL)で鹿島アントラーズ、川崎フロンターレとも相対した。

 158センチという非常に小柄な体格ながら、誰もが認める傑出したアジリティーと足元の技術、三上GMが「世界レベル」と評する判断の速さは日本のトップレベルの選手相手にも力を示した。なかでも圧巻だったのは、2月28日にタイで行われたACLグループステージの鹿島戦。昨季のJリーグ王者を撃破したこの一戦で、チャナティップは2得点を演出してマン・オブ・ザ・マッチに選ばれた。

「タイのメッシ」の異名を持つが、ドリブルで1人で持ち込むプレーはそれほど多くない。スピードを生かした突破も武器ではあるが、近年は中盤や前線で起点となり、人を使いながら決定機を演出するプレーの方が目につく。ムアントンとの親善試合でも前線でボールを受け、菅大輝へスルーパスを通して好機を生むシーンが見られた。

 昨年から続く印象的な活躍で、昨今はアジアを代表する選手の1人としても名前が挙がるようになっている。英誌『フォー・フォー・トゥー』による「アジア選手ベスト50」の17年版では15位にランクイン。Jリーグでプレーする日本人選手は43位の中村憲剛ただ1人であり(海外組の日本人選手は除く)、同ランキングではチャナティップが「Jリーグ最高のアジア人選手」の評価を得ていることになる。

 ACLのグループステージでは、鹿島戦を含む3試合でマン・オブ・ザ・マッチに選出された。そういった実績からも、能力的にはJ1で輝ける水準にあることは疑いようがないだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。静岡県浜松市出身。出版社勤務を経て、2011年に独立。2017年までの6年間はバンコクを拠点に取材活動を行っていた。その後、日本に拠点を移してライター・編集者として活動、現在もタイを中心とするアジアでの取材活動を続けている。タイサッカー専門のウェブマガジン「フットボールタイランド」を配信中。

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