久留米水天宮のゴリヤク◎シャケトラ  「競馬巴投げ!第155回」1万円馬券勝負

乗峯栄一

有馬記念を取りたい人は久留米水天宮にお参りしろ!

[番外写真1・有馬水天宮] 【写真:乗峯栄一】

 菊花賞の日は実は現場にいなかった。馬主が長年の知り合いで、今年園田の兵庫ダービーを勝ったブレイヴコールという馬が、佐賀競馬場の西日本ダービーに出るというので、佐賀に応援に行っていた。

 佐賀競馬場は初めてである。しかしレースは(たぶん菊花賞が終わってからという意味もあるのだろう)5時10分発走だ。5時まで時間があるなら、大阪を早く発てば、久留米水天宮や吉野ヶ里遺跡も回れる。こんなチャンスはそうないだろう。

 久留米水天宮は、東京の日本橋水天宮の総本社だ。壇ノ浦の戦いで海中に沈んだ二位の局(つぼね・平清盛の妻)とわずか五歳で供をした安徳天皇が祀ってある。

 この久留米藩を治めていた大名・有馬氏が江戸上屋敷に分祀したのが、江戸の水天宮であり、明治になって一般に開放され「情けありまの水天宮」と言われて庶民の尊崇を受けるようになった。

 その有馬家の末裔が日本中央競馬会・第二代理事長の有馬頼寧(よりやす)であり、この人の意向を受けて出来たレースが有馬記念であり、有馬頼寧の子孫たちは代々、日本橋水天宮の宮司をしている。

 つまり、色々言うが、「有馬記念」を取りたい人は「久留米水天宮にお参りしたらどうだ」という、言いたいことはそこだ。[番外写真1・有馬水天宮]

新幹線8時間と13万儲けるの、どっちがいい?

[番外写真2・吉野ヶ里遺跡] 【写真:乗峯栄一】

 吉野ヶ里遺跡も思ったよりずっと広大でよかった[番外写真2・吉野ヶ里遺跡]。「すげえな、すげえな」と感嘆していると、ブレイヴコールの馬主から電話が入り、「そろそろ競馬場来ないと間に合わないぞ」と言われ、親切にも「吉野ヶ里までレンタカーで迎えにいってやる」と言ってくれる。

[番外写真3・佐賀競馬場] 【写真:乗峯栄一】

 佐賀競馬場[番外写真3・佐賀競馬場]は周りが林と駐車場で、広々としたいい競馬場なのだが、車を持たない人間にはアクセスが最悪だ。しかも「ほとんどのヤツが車で来るからビールは置くな」という通達が場内各食堂に出ているようなのだ。場内に酒がないのだ。

 ここ、ほんとに太字で強調しておいて欲しい。

 酒飲みをバカにするな!

 てなことで、佐賀競馬場手前のコンビニで停めてもらい、ビールを買いに行こうとする。すると、このレンタカーのカーナビTV、車を止めると中継映像が映るのだ。「え、菊花賞、始まるやないか」と車内全員で見入る。

 どの馬も泥だらけになって、何が何やら分からなかったが、「3着に来たあの馬、真っ黒になってたけど、実は芦毛と違うんか。芦毛のポポカテと違うんか!」と約1名大騒ぎするやつがいる。当コーナーの予想はクリンチャーが抜けていたけど、内緒で勝った三連複にはクリンチャーも入れていた。13万だ。

 コンビニに入るときには、背中が地面に付くほど体を返る。「この店にあるビールロング缶、全部くれ!」などと叫ぶ。ほんと、下品だ。

 肝心の園田ブレイヴコールは、距離が長かったのか7着に終わったが、博多で数人にメシを奢り、意気揚々と引き上げた。引き上げようとした。ところが新幹線が岡山で立ち往生する。台風21号の影響だ。結局、岡山で3時間も止まり、新大阪に着いたのは午前3時だ。

 それから朝5時まで「休憩用新幹線」で横になり、始発の地下鉄で帰ってきた。

 しかしだ。新幹線に8時間乗るのと、13万儲けるのはどっちがいいかというと、こりゃもう決まってるわな。もう久留米水天宮のおかげだ。新幹線に8時間も乗せてもらった上に13万いただいて、ほんと、感謝しております。はい。

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著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

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