惜しくも予選で敗れ去ったJ内定者たち 高卒でプロへ、変化が見えた卒業後の進路
横浜FM内定の生駒は将来有望なCB
横浜FMへの加入が内定している鹿児島城西の生駒仁(写真は17年9月のU−18日本代表合宿のもの) 【川端暁彦】
たとえば、鹿児島県からは鹿児島城西のDF生駒仁が横浜F・マリノス、神村学園のFW高橋大悟は清水エスパルスへの来季新加入が決まっているが、予選決勝で対峙(たいじ)した二人の明暗は必然的に分かれることとなった。過去2大会はいずれも生駒擁する鹿児島城西が神村学園を破って全国に進んでいたが、今年は0−0からPK戦までもつれ込む戦いの末、神村に軍配。前年度の選手権でも大活躍を見せ、高校サッカー界でも指折りと評価されるDFは決勝の舞台で涙をのむことになった。
ただ、この試合も強力攻撃陣の神村を完封し切ったことからも分かるように、生駒自体のポテンシャルは間違いなく高い。「ヘディングは絶対に負けたくない」と語るように、184センチの長身を生かした空中戦の強さを武器とするセンターバック(CB)は、スピードもあってスペースにも強い。今年はけがに泣いたこともあったが、それでもプロのスカウトからの評価が落ちなかった。まだビルドアップの部分や判断には課題もあり、U−18日本代表の最終メンバーからは漏れていたが、プロでもまれる中で伸びていく可能性は十分にある。
潜在能力はピカイチの履正社FW町野
“ハンパない”資質を持つ履正社のFW町野。U−18J選抜との試合ではスーパーゴールを決めた 【写真:築田純/アフロスポーツ】
元々は中盤の選手だったこともあり、足元の器用さがまず光る。左右両足をしっかり使えて、184センチという長身を生かした懐の深いキープから周りを使うプレーも巧みだ。そして何より、左右両足から繰り出すシュートは“ゴラッソ”製造器。ワンタッチでのボレーやミドルシュートなど、観る者の度肝を抜いて記憶に残るようなスーパーゴールをこれまでに幾つも決めてきた。
横浜FMのエリク・モンバエルツ前監督はゼロックススーパーカップの前座試合として行われた、日本高校サッカー選抜とU−18Jリーグ選抜の試合でファインショットをたたき込んだ彼を見て、すぐに「彼を獲らないのか?」とスカウトに聞いてきたそう。一振りで見る者を虜(とりこ)にするような“一発”のある選手である。
守備への貢献を含めた総合的な力という意味ではまだまだの部分もあり、今夏に欧州クラブへ練習参加した際には、「フィジカル面でまだまだ足りないと思った」と課題も痛感。プロ入り後はウェイトアップも含めた肉体作りにも力を注ぐ。U−18日本代表のスタッフも「プロで化けるかもしれない」と期待を込めて見守っており、ここからのブレイクスルーに期待したい逸材だ。
3人のプロ内定選手を擁する興国高校
興国の大型ボランチ・西村恭史(右)。ボランチの位置からスペースを見つけてボールを運ぶドリブルも巧みだ 【川端暁彦】
エースFWの大垣勇樹は来季、名古屋グランパスへと進む。出場こそならなかったものの、すでにJFA・Jリーグ特別指定選手(高校チームなどに所属したまま、Jリーグへの出場を可能にする制度)としてJ2リーグ戦のベンチ入りも果たしており、風間八宏監督の評価も非常に高い選手。複数クラブによる争奪戦となったが、クラブ側の熱意が実る形での名古屋入りとなった。
その魅力は何と言っても、スピードに乗ったドリブル。柔らかいタッチに加え、ボールを持っても速さが落ちないプレーぶりは、日本代表MF乾貴士の高校時代を彷彿(ほうふつ)とさせるものがあり、ドリブラーにありがちな視野の狭さもない。うまくDFの間でボールを受けながら、機を見て仕掛けて切り崩すプレーはJクラブのみならず、欧州クラブからも高い評価を受けた。
また、清水エスパルス内定の大型ボランチ・西村恭史からも大器の予感が漂う。中学時代は所属チームでも試合に出られない時期があったと言うが、高校入学後に身長が10センチも伸びたことから分かるように、もともと晩熟タイプの選手だったのだろう。184センチと大柄ながら不器用さはなく、ボランチの位置からスペースを見つけてボールを運ぶドリブルも巧み。長い距離のキックを精密に蹴り分ける技術があり、ミドルシュートやFKも持っている。
ジャンプ力もあり、ヘディングのポテンシャルもかなりのもの。プロのステージで武器にするためには筋力アップを含めてまだ練習が必要だが、可能性は十分にある。日本にはあまりいないタイプだけに、関係者の期待値も高い。年代別日本代表には今年9月の候補合宿に一度呼ばれたのみで、しかも合宿途中で負傷するという「持っていない」ところを見せてしまったが、そこまでの評価はかなり高かった。