惜しくも予選で敗れ去ったJ内定者たち 高卒でプロへ、変化が見えた卒業後の進路
名門・市船からは3選手がJ2クラブへ
U−18日本代表でもプレーする杉山弾斗は、J2千葉への加入が内定 【写真:アフロ】
1人はジェフユナイテッド千葉へ加入するU−18日本代表DF杉山弾斗。1年生から名門で活躍してきた左利きの左サイドバックにはJ1を含めた複数クラブが興味を示していたのだが、本人は当初「進学するつもりだった」という。両親からも強くそれを求められ、「母には泣かれてしまって」と笑うが、その決意は固く、大学へ進むことよりも選手としてのチャレンジを選んだ。
市船からは191センチの大型GK長谷川凌が水戸ホーリーホックに、万能型FW福元友哉がファジアーノ岡山に加入する。また、静岡学園から徳島ヴォルティスへ進む、超絶技巧の個性派MF渡井理己もJ2での挑戦を選んだ選手の1人で、大学への多様な進路を持っている名門高校でも、J2クラブ入りを選択する選手が増えてきたのは明確な変化だろう。
以前は「J1からオファーがなければ、大学進学を勧める」「プロは失敗したときのリスクがあるので、大学進学がいい」というのが一般的な指導者の価値観だったが、近年は「出場機会を考えたら、無理にJ1へ行くよりもJ2のほうがいい場合もある」「本人がチャレンジしたいなら応援したい」といった考え方も増えてきた。四国学院大香川西のMF本田功輝は4月下旬に早々と千葉入りを固めたが、湘南ベルマーレに加入する市立長野のMF新井光も、所属カテゴリーは気にしていなかったと言う。
プロ入りの決断をする選手が増加傾向に
高校サッカー側のJリーグへの不信感やJユースチームが力を付ける流れもあり、一時期は高卒すぐにプロ入りする選手は減少していた(プロ入りのオファーを蹴って大学へ進む選手も実際に多かった)。ただ、Jクラブが全体として高卒選手を積極的に育てていこうという流れに変わってきたことに加えて、日本社会全体の価値観が段々と変化してきた影響もあるのだろう。明らかに傾向は変わってきている。
何にしても、まだ高校生である彼らの未来はすべてこれから。高校サッカー選手権の予選で敗れた傷はまだ癒えていないだろうが、そのシビアな経験はプロのステージでまた生きてくる。過去、3年生で選手権を経験せずに大成した選手はいくらでも挙げることができる。あえてリスクを冒し、プロのステージへのチャレンジを選んだ彼らの人生が、より実り多いものとなることを期待している。