健常バドミントンからパラへ――「金の卵」今井に決意させた敗戦の記憶

宮崎恵理
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提供:東京都

出会いは選手発掘事業の参加

健常のバドミントンでプレーしていた今井。パラバドミントンとの出会いは選手発掘事業に参加したのがきっかけだった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 2020年東京パラリンピック開催が決まり、若手の発掘・育成が急ピッチで進められている。これまでスポーツに親しみのなかった子どもたちや、パラスポーツの存在を知らなかった人が触れるチャンスが圧倒的に増えてきた。

 選手発掘事業でパラバドミントンに出会った今井大湧(日本体育大)も、その1人だ。

 パラバドミントンは東京パラリンピックで初めて正式採用となるため注目度が高まっている競技で、今井は上肢障がいのクラス(SU5)の選手。17年11月現在、シングルスの世界ランキング3位というトップアスリートである。

 今井は、1998年に愛知県で生まれた。先天的に右ひじの先がない。通っていた小学校にバドミントンクラブがあり、4年で始めた。中学では県大会に出場、バドミントン選手としてさらに上達したいと愛工大名電高に進学し、インターハイ出場を目指していた。

 パラバドミントンに出会ったのは2015年12月、高2の冬である。選手の発掘事業が開催される情報を得た父に連れられ参加したのがきっかけだ。

「障がい者のバドミントン競技があることさえ知りませんでしたから、どんな選手たちがプレーしているんだろうって」

 今井の実力は、集まっていた日本障がい者バドミントン連盟のスタッフたちの目に止まった。

「金の卵だ!」

初めて知った世界のレベル

 1カ月後、初めてパラバドミントンの日本選手権に出場。「勝つだろうと思っていた」という今井の想定通りにシングルスで優勝した。

 この結果を受けて、高3の夏、初めての国際大会出場の話が舞い込む。

「高校のバドミントン部の先生に報告したら、『国際大会は誰もが経験できることじゃない。出場してみろ』と言われたんです」

 本音を言えば、日本選手権で優勝した時点で、パラバドミントンを継続するつもりはなかったという。教師の言葉に背中を押されてアイルランドで行われた国際大会に出掛けたのだった。

「そうしたら、決勝でマレーシアのリク(・ハウ・チア、現在の世界ランキング1位)選手に負けました」

 初めて体験した、パラバドミントンの世界レベル。

「世界にはリク選手のようなすごいプレーヤーがいる。それを知ってパラバドミントンを続けよう、東京パラリンピックを目指そうと思うようになりました」

 高校卒業後は日本体育大に進学。現在、バドミントン部に籍を置き、他の学生と一緒にハードなトレーニングに取り組んでいる。

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著者プロフィール

東京生まれ。マリンスポーツ専門誌を発行する出版社で、ウインドサーフィン専門誌の編集部勤務を経て、フリーランスライターに。雑誌・書籍などの編集・執筆にたずさわる。得意分野はバレーボール(インドア、ビーチとも)、スキー(特にフリースタイル系)、フィットネス、健康関連。また、パラリンピックなどの障害者スポーツでも取材活動中。日本スポーツプレス協会会員、国際スポーツプレス協会会員。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』。

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