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強豪相手の欧州遠征をどう評価すべきか?
不明確な「ビッグ3」招集外の意図

ベルギー戦で目を向けたい彼我の差

欧州予選でグループ1位通過をしたベルギー。日本はこの対戦の背景にあった彼我(ひが)の差にも目を向けなくてはいけない
欧州予選でグループ1位通過をしたベルギー。日本はこの対戦の背景にあった彼我(ひが)の差にも目を向けなくてはいけない【Getty Images】

 ベルギー対日本を翌日に控えた11月13日の夜(現地時間)、イタリアのワールドカップ(W杯)予選敗退というショッキングなニュースが世界中を駆け巡った。


 欧州予選のグループGを1位抜けしたスペインには5ポイント差の2位に終わったものの、それでもイタリアは7勝2分け1敗と、プレーオフ進出の8チームの中ではスイスに次ぐ戦績であった。そしてプレーオフの相手は、ここ2大会W杯出場を逃しているスウェーデン。アッズーリ(イタリア代表の愛称)優位は揺るぎないものと思われた。しかし結果は、アウェーで0−1、ホームで0−0。かくしてイタリアは実に60年ぶりに本大会出場を逃し、これが代表175試合目だったジャンルイジ・ブッフォンは、深い悲しみの中で代表引退を宣言した。


 コラムの冒頭にこのエピソードを持ってきたのは、われわれは欧州におけるW杯予選の厳しさを再認識する必要があると感じたからである。今予選ではオランダやトルコといった強豪国がプレーオフ進出さえかなわなかったことが話題となったが、イタリアのプレーオフ敗退はそれ以上に衝撃的であった。大陸王者のチリが脱落した南米、大会の常連だった米国が涙をのんだ北中米カリブ海、そしてコートジボワールの連続出場記録が途切れたアフリカなど、他の大陸予選も厳しい戦いの連続であった。しかしながら、欧州ほど熾(し)烈な大陸予選は他にはない。そうした厳しい状況で、堂々の1位通過を果たしたのが、今回日本が対戦するベルギーなのである。


 もっともそのベルギーにしても、FIFA(国際サッカー連盟)ランキングで一桁台に定着したのは2013年に入ってからのこと。W杯は、日本と同組だった02年大会に出場後2大会は予選落ちだったし、ランキングも07年には71位にまで下がっている。どんな国にも浮き沈みというものはあるが、それ以前に欧州という舞台そのものが、ナショナルチームにとっても常にコンペティティブであることは留意すべきであろう。欧州ではイタリアが落ちてアイスランドが1位抜けすることも起こり得るが、アジアでは日本や韓国を蹴落としてシンガポールやカンボジアがW杯に出場するようなダイナミズムはない。


 ただ競争が厳しいだけでなく、変化のスピードが目まぐるしいのが欧州の特徴であり、そこがアジアとの一番との違いである。ゆえに現在、FIFAランキング5位のベルギーもまた、4年後が安泰である保証などどこにもない(だからこそ彼らは今でも必死だ)。今回の欧州遠征、とりわけこのベルギー戦は、単に対戦相手との力関係だけでなく、相手のバックグランドとの彼我(ひが)の差についても目を向ける必要があるだろう。

ベルギー戦で問われた守備面の意思統一

ベルギー戦では、全員のハードワークと守備面の意思統一が問われていた
ベルギー戦では、全員のハードワークと守備面の意思統一が問われていた【Getty Images】

 ベルギー戦の試合会場となったヤン・ブレイデルスタディオンは、収容人数が2万9945人。ユーロ(欧州選手権)2000開催の際にスタンドが増設されたが、外観はオープンした1974年当時からほとんど変わっていない。ここはクラブ・ブルージュとサークル・ブルージュという、2つの地元クラブがホームスタジアムとして使用している。クラブカラーは、前者が青と黒で後者がグリーン。クラブハウスとショップは色分けされて共存している。異なるカルチャーがコンパクトに共存するさまは、いかにもベルギーらしい。


 そんな「ベルギーらしい」会場で開催される、今回のベルギー戦。4日前のブラジル戦での敗戦(1−3)での一番の修正点は、ディフェンス面での意思統一である。ボールを持った相手に対して、前で奪うべきか、それとも引いて守るべきか。先のブラジル戦では、いきなりVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が作動してPKから失点したこともあり、統一感がないままに世界最強の攻撃陣に対応。当然の結果として、前半で3失点を喫することとなった。この現実を受けて、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督はベルギー戦の前日会見でこう語っている。


「いつハイプレスをかけるのか。いつ下がってブロックを作るのか。それは『ゲームの状況』が決めることだ。ハイプレスをかけるのか、ミドルブロックを形成するのか、ローブロックにするのか。それは私が『ここで作りなさい』と決めることではなくて、ゲームの状況に合わせて作るものだ」


 前提となるのが、全員のハードワークと意思統一。そのためのディスカッションは、短い準備期間の中で選手間で頻繁(ひんぱん)に行われていた。そして迎えたベルギー戦、日本のスターティングイレブンは以下の通りである。GK川島永嗣。DFは右から酒井宏樹、吉田麻也、槙野智章、長友佑都。中盤はアンカーに山口蛍、インサイドハーフに井手口陽介と長澤和輝。FWは右に浅野拓磨、左に原口元気、そしてセンターに大迫勇也。


 結果として、2日前の公開練習と同じ顔ぶれとなった。別メニューだった長谷部誠に代わって吉田がキャプテンを務め、今回初招集の長澤をスタメンに抜てき。対するベルギーはメキシコ戦から5人が入れ替わり、先の試合で1ゴールを挙げたエデン・アザールはけがのためベンチ外となった。システムは3−4−3で、これまた予想通り。一方で日本の懸念材料は、ブラジル戦からベルギー戦まで中3日しかなかったことだ。限られた準備期間の中、果たして日本はどこまで修正することができたのだろうか。現地時間、20時45分にキックオフ。

宇都宮徹壱
宇都宮徹壱
1966年生まれ。東京出身。東京藝術大学大学院美術研究科修了後、TV制作会社勤務を経て、97年にベオグラードで「写真家宣言」。以後、国内外で「文化としてのフットボール」をカメラで切り取る活動を展開中。旅先でのフットボールと酒をこよなく愛する。著書に『ディナモ・フットボール』(みすず書房)、『股旅フットボール』(東邦出版)など。『フットボールの犬 欧羅巴1999−2009』(同)は第20回ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。近著はスポーツナビでの連載をまとめた『J2&J3 フットボール漫遊記』(東邦出版)

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