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イランの奇策と岡田武史の判断
集中連載「ジョホールバルの真実」(7)
ラルキン・スタジアムは日本人の観客で埋まり、まるで国立競技場のように青く染まっていた
ラルキン・スタジアムは日本人の観客で埋まり、まるで国立競技場のように青く染まっていた【写真:アフロ】

 ウォーミングアップのためにグラウンドに出た北澤豪は、驚かずにはいられなかった。2万3000人収容のラルキン・スタジアムのスタンドの9割が日本人の観客で埋まり、まるで国立競技場のように青く染まっていたからだ。

「おお、スゲエな」と奮い立つ北澤の横に、冷静な男がいた。

「ヒデ(中田英寿)がね、『こんなの、日本と変わらないじゃん』ってボソッと言ったの。こいつ、ムカつくこと言うなと思ったんだけど、確かにそうだなって。そういう冷静さが必要だな、と思い直したんだ」

 夕方から断続的に降り注いだスコールもすっかりやんだ午後9時3分、三浦知良と中山雅史によるキックオフで試合が始まった。

イランは戦前の予想と異なり、3トップの布陣できたのだった
イランは戦前の予想と異なり、3トップの布陣できたのだった【写真:ロイター/アフロ】

 名良橋晃が異変に気付いたのは、その直後のことだった。

 スカウティングによれば、イランはアリ・ダエイとホダダド・アジジの2トップのはずなのに、自分の目の前に、アジジがウイング然として張り出していたのだ。

 逆サイドではウイングバックのはずのメフディ・マハダビキアが、これまたウイングのように高い位置を取り、相馬直樹の目の前にポジションを取っている。名良橋が振り返る。

「イランが3トップできたのはすぐに分かりました。僕とアジジ、相馬くんとマハダビキア、井原(正巳)さん、秋田(豊)さんとダエイのマッチアップという構図。これはもう、自分はアジジと一騎打ちだなって」

 メーンスタンドから見て右に陣地を取った日本は、左に向かって攻めていく。つまり、名良橋のいる右サイドがバックスタンド側で、相馬のいる左サイドがメーンスタンド側だった。日本のベンチの目の前でプレーする相馬が「3トップできています! どうしますか?」と確認すると、岡田武史は間髪入れず「構わずいけ! 思い切って出ろ!」と叫んだ。

飯尾篤史
飯尾篤史
東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書として『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)、城福浩『Jリーグサッカー監督 プロフェッショナルの思考法』(カンゼン)などがある。

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