カズの不調と城彰二の複雑な想い 集中連載「ジョホールバルの真実」(6)

飯尾篤史

昼食後のミーティングルーム、岡田武史の口からスターティングメンバー11人と、ベンチ入りメンバー7人の名前が発表された 【写真:FAR EAST PRESS/アフロ】

 24人の選手たちの視線が、集中する。
 決戦当日の11月16日、昼食後のミーティングルーム。ピッチが薄く描かれた模造紙が貼り出され、そこに4−4−2のシステムに合わせて選手の名前が書き込まれている。
 あらためて岡田武史の口からスターティングメンバー11人と、ベンチ入りメンバー7人の名前が発表された。

スターティングメンバー
GK:川口能活
DF:名良橋晃、秋田豊、井原正巳、相馬直樹
MF:中田英寿、山口素弘、名波浩、北澤豪
FW:中山雅史、三浦知良

ベンチ入りメンバー
GK:楢崎正剛
DF:小村徳男、中村忠
MF:本田泰人
FW:呂比須ワグナー、岡野雅行、城彰二

名良橋晃は自身がスタメンに名を連ねたことに安堵していたという 【スポーツナビ】

「予想どおりでしたね」と、振り返ったのは北澤である。
「多少の入れ替えはありましたけれど、時間が限られているので、ほとんど固定して、連係を深めることに重点を置いていましたから」
 名良橋は、自身がスタメンに名を連ねたことに安堵(あんど)していた。Aチームでメンバーの入れ替えが行われたポジションのひとつが、右サイドバックだったのだ。
 実際、前日のスポーツ紙では右サイドバックに中村が予想されている。関係者への取材で、中村がレギュラー組に入ったという情報を、スポーツ紙がつかんだからだ。
「もちろん、前日のセットプレーの練習でスタメンかもしれないな、と思いましたけれど、それでも正直、ぎりぎりまで分からなかったです。相馬くんの左サイドは無風でしたけれど、右サイドは柳本(啓成)、永輔(中西)と、ずっとライバルがいて、イラン戦の前にもミニラ(中村)が復帰してきた。だから、信用されていないのか、と」

 一方、自身がスタメンでないことに納得していたのは、城だった。
 好調を維持し続け、三浦と呂比須が出場停止だった直前のカザフスタン戦にフル出場したにもかかわらず、城はベンチスタートを受け入れていた。
「実力的に考えたら、カズさん(三浦)、ゴンさん(中山)が出るのが当然だなと思ったし、ロペ(呂比須)もいましたからね」
 イラン戦に向けて岡田は6人のFWを招集していた。カズ、中山、呂比須、城、高木琢也、岡野の6人である。
「高さ、強さ、スピード、起点になれる、守備ができる、フィニッシュの力を持っている、途中から流れを変えられる……あらゆる特徴を持ったFWがそろっていた。あとは誰と誰を組み合わせ、頭から出すのか、途中から出すのか、という見極めでした」
 小野剛はそう明かす。もっとも、岡田に迷いはなかったようだ。12日のトレーニングでベンチ入りメンバー18人を決め、13日にはスタメンを固めていたという。

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著者プロフィール

東京都生まれ。明治大学を卒業後、編集プロダクションを経て、日本スポーツ企画出版社に入社し、「週刊サッカーダイジェスト」編集部に配属。2012年からフリーランスに転身し、国内外のサッカーシーンを取材する。著書に『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』(ソル・メディア)、『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成として岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(KKベストセラーズ)などがある。

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