悩めるネイマールの行く末は? 狂気の移籍金が飛び交うヨーロッパの夏

移籍市場の話題が全てを覆い尽くす

ネイマールはバルセロナにとどまるのか、移籍を選ぶのか? 【写真:ロイター/アフロ】

 真剣に考え込むような表情でピッチに寝そべる自身の写真に、同様の表情をした絵文字――7月21日に投稿されたネイマールのインスタグラムの投稿は、異常なまでに移籍金が高騰し続けるヨーロッパのフットボール界の現状をよく表している。

 ビジネスがフットボールを支配する構図は、日増しに明確になっていく。主要リーグの開幕が間近に迫っているにもかかわらず、うわさされている大型移籍の多くは8月いっぱいで実現することになる。われわれメディアも強化プランや遠征合宿、日程の話をしたくても、実際は移籍市場の話題が全てを覆い尽くし、その他の情報は二の次とせざるを得ない。

 レアル・マドリーのフロレンティーノ・ペレス会長は十数年前、デイビッド・ベッカム獲得のうわさを「ネバー、ネバー、ネバー」と否定していた。それが結局、どうなったのかは周知の通りである。その彼は数日前、うわさされるモナコのキリアン・ムバッペの獲得について、「8月にビッグネームの獲得を1人ならず実現する。初めてのことではない」と話していた。

 今ほど安定してタイトルを勝ち取り続けていなかった以前なら、それほど率直に認めることはなかっただろう。それにレアル・マドリーは今夏、既にハメス・ロドリゲスをバイエルン・ミュンヘン、アルバロ・モラタをチェルシー、そしてダニーロをマンチェスター・シティに放出したことで、大型補強に必要な資金を十分に集めることができている。

チーム作りも移籍市場の動きに左右される

ダニエウ・アウベス(左)をこの夏に獲得したPSG。ネイマールの獲得が実現することになれば、チームの戦い方は一変するだろう 【Getty Images】

 現在はプレシーズンのチーム作りもスケジュールも、全ては移籍市場の動きに左右されるようになっている。新たな戦力が加われば、監督はシステムや戦術の変更を強いられる可能性がある。だが戦力を増し、前シーズンより強いチームとなるためには、そういった苦労も歓迎すべきことなのだ。

 例えばパリ・サンジェルマン(PSG)のウナイ・エメリ監督が「うちには世界のトップ5に入る選手が2人は必要」と主張していた通り、ダニエウ・アウベスに続いてネイマールの獲得が実現することになれば、チームの戦い方は一変するだろう。一方で2億2200万ユーロ(約288億6000万円)もの契約解除金を手にするバルセロナは、そのパリ・サンジェルマンからマルコ・ベッラッティを引き抜く可能性が高い。

 バルセロナがネイマールを失った場合、ユベントスのパオロ・ディバラを獲りにいく可能性もある。彼はアルゼンチン代表のチームメートであるリオネル・メッシが絶賛している選手である。

 もちろんディバラはネイマールとは異なる選手であるため、彼が加わった際にはシステムの変更を余儀なくされる可能性がある。ここ数年のように南米トリオを前線に並べるのではなく、より中盤の人数を増やすのか。アルゼンチン代表監督のホルヘ・サンパオリが検討しているように、新たなストライカーを前線に起用し、メッシとディバラを2列目に下げることも考えられる。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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