うわさばかりが先行するリーガの移籍市場 「3強」の補強が進まない理由とは?

レアル・マドリーはムバッペの獲得に動く

16−17シーズンに2冠を達成したレアル・マドリーはムバッペの獲得に力を入れている 【写真:ロイター/アフロ】

 ヨーロッパの移籍市場が始まっているが、リーガ・エスパニョーラの周囲は多くのうわさが浮上するばかりで、具体的なビッグネームの大型移籍はほとんど生じていない。スペインの主要クラブは国内外での競争力を高めるべく、選手補強によるチーム強化を必要としていることは確かだ。しかし、実際にはその妨げとなる要因がいくつも生じている。

 レアル・マドリーは2016−17シーズンに史上初となるチャンピオンズリーグの連覇を実現し、リーガ・エスパニョーラとの2冠も獲得した。ヨーロッパ最高のチームとみなされるようになった彼らに問いたいのは、新たにスター選手を獲りにいく必要がどこにあるのかということだ。

 カリム・ベンゼマ、アルバロ・モラタら、違いを生み出すことのできるストライカーを擁しながら、フロレンティーノ・ペレス会長は早い段階からモナコの新星キリアン・ムバッペの獲得に動いている。それは現状に満足することなく、戦力豊かなチームをさらに強くすることが目的だと、多くの人々が主張している。

 ベンゼマはこれまで数々のタイトル獲得に貢献し、並外れたプレーレベルを披露してきたにもかかわらず、いまだにペレスを納得させることができていない。ロス・ガラクティコス(銀河系軍団)時代のロナウドを忘れられずにいるペレスは、18歳の若さで頭角を現したムバッペがロナウドの理想的な後継者であり、チームが近年の成功に満足せぬよう、新たな刺激をもたらす存在になると考えている。

 いずれにせよパリ・サンジェルマン(PSG)も札束攻勢を仕掛けている現状、モナコに1億3500万ユーロ(約167億円)ともいわれる移籍金を要求されているムバッペを獲得するためには、まずは昨季控えに甘んじていたモラタとハメス・ロドリゲスを売却する必要があった。

2大クラブからの注目を集めているセバージョス

セバージョスはレアル・マドリーとバルセロナの2大クラブから注目を集めている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 そうでなくとも、モラタは十分なプレー時間を与えられていないレアル・マドリーから出ていこうとしている。移籍市場の注目株である彼は、ジョゼ・モウリーニョにマンチェスター・ユナイテッドの中心選手となるよう誘われているのだから無理もない。

 ハメスは例外的な選手だといえる。14年のワールドカップブラジル大会で得点王に輝くなど、多くの人々が大会最優秀選手だと考えるほどに活躍した彼は、直後に移籍したレアル・マドリーでも、出番を与えられた際にはその才能を証明してきた。それでも定位置を確保するには至らず、マンチェスター・UやPSGへの移籍が噂された末、バイエルン・ミュンヘンへの期限付き移籍が決まった。

 またペレスは今夏こそマンチェスター・Uのダビド・デ・ヘアを獲得するつもりだったが、シーズン終盤に素晴らしい活躍を見せたケイロル・ナバスを正GKに維持すると主張したジネディーヌ・ジダン監督の意向に折れ、結局今回も獲得を断念することになった。

 このような状況下、2大クラブの注目を最も集めているのがスペイン人選手であることは朗報といえるかもしれない。レアル・マドリーとバルセロナの双方から獲得オファーを受け、さらに現所属のレアル・ベティスからも年俸の大幅アップを伴う契約更新を打診されたことで、ダニ・セバージョスは自身の将来をじっくり考えるために数日間の猶予を与えられている。

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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