うわさばかりが先行するリーガの移籍市場 「3強」の補強が進まない理由とは?

思うように移籍交渉が進まないバルセロナ

エクトル・ベジェリン(右)の獲得に務めてきたバルセロナだが、移籍交渉は思うように進まなかった 【Getty Images】

 バルセロナも思うように移籍交渉が進んでいない。とりわけ補強が急務の右サイドバックには下部組織出身者であるアーセナルのエクトル・ベジェリンの獲得に努めてきた。だがアーセン・ベンゲル監督の承諾を得ることができず、アーセナルはバルセロナが提示している移籍金3500万ユーロ(約45億円)は低すぎるとして首を縦に振ってくれない。

 結局、バルセロナはベンフィカでプレーするネウソン・セメドを3000万ユーロ(約39億円)+500万ユーロ(約6億円)のインセンティブで獲得することになった。

 ベジェリンと同様に、マルコ・ベラッティの獲得交渉も難航している。シャビ・エルナンデスもバルセロナの中盤にと推している彼はまだ若く将来有望な選手であり、長期の契約を結んでいるPSGには売るべき理由がない。そのため、過去にマルキーニョスやチアゴ・シウバへのオファーに耳を貸さなかった時と同じように、バルセロナが諦めるまで無視し続けることを決め込んだようだ。

 選手を売りに出す必要がないPSGとは、交渉の席に着くことすらかなわない。具体化する見込みがないのであれば、これ以上ベラッティにこだわるのは時間の無駄である。そう悟り始めたバルセロナは、とりわけアンドレス・イニエスタがあと何年プレーし続けるか不透明なこともあり、中盤の補強は他の選手に狙いを変える方が得策だと判断したようだ。

アトレティコ・マドリーには補強禁止処分が課される

アトレティコ・マドリーには補強禁止の処分が下されている 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 いずれにせよ、ここまでバルセロナ関連の情報はうわさが大半を占めてきた。実際にあった動きは先述のセメドに加え、昨季の後半にミランで良いパフォーマンスを見せたカンテラーノ(下部組織出身者)のジェラール・デウロフェウを買い戻したくらいである。

 今季よりビセンテ・カルデロンから新スタジアムのワンダ・メトロポリターノに本拠地を移転するアトレティコ・マドリーは、この上なく厳しい状況にある。数年前のバルセロナと同じく、未成年選手の国際移籍に関する違反によりFIFA(国際サッカー連盟)から補強禁止処分を受け、今夏は新たに選手を登録できないからだ。

 そのためアトレティコ・マドリーは処分が解ける来年1月を見据えた補強プランを進めている。先日獲得が決まったセビージャのビトロは、今季の前半は古巣のラス・パルマスでプレーし、来年1月からアトレティコ・マドリーの選手となる予定だ。さらにアトレティコ・マドリーはプレミアリーグ王者のチェルシーで際立った活躍を見せたジエゴ・コスタの買い戻しを目指している。

 アトレティコは補強そのものが禁止中で、バルセロナはほしい選手に手が届かず、補強の必要がないレアル・マドリーは新たなスター選手を獲得するために、現有戦力を売却しなければならない。今夏のスペインのマーケットは、ゆえに騒音ばかりで具体的な動きが見られないのである。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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