追悼“極悪大王”ミスター・ポーゴ様 東京03豊本のプロレスあれこれ(15)

東京03 豊本明長
 6月23日、ミスター・ポーゴ選手がお亡くなりになりました。66歳という若さでした。

 FMWでは大仁田厚選手のライバルとして抗争を繰り広げ、W★INGでは松永光弘選手とともにカルト的な人気を博し、それ以降は様々な団体に上がり“極悪大王”として悪の限りを尽くしました。

 近年は、その人柄の良さや可愛らしい一面がクローズアップされる事が多かったポーゴさん。

 僕もよくポーゴさんの事をコラムなどでも書かせてもらいました。

 そして今回のコラムでも書かせてもらいます。「ミスター・ポーゴ」という悪役レスラーの事を。

常に“敵”のサイドにいたポーゴ

奥さんのミス・モンゴル(左)との縁もあり、ミスター・ポーゴさん(中央)とはお話させていただく機会もありました 【写真提供:東京03 豊本明長】

 僕はFMW、W★INGが大好きで観戦もよくしていました。その当時はポーゴさんの試合を沢山見てきました。

 いわゆるポーゴさんは正規軍と相反する立場で参戦していました。いわば敵です。ですから、観戦しながら、ポーゴさんにはブーイングをし、正規軍を応援しました。

 ファイトスタイルは悪い事しかしない悪役レスラー。簡単に悪い事と言いましたが、とんでもなく悪い事をします。

 ポーゴは試合中に相手の頭に灯油をかけて火を吹いて人を焼きました。

 ポーゴは鎖鎌で相手の額や背中を切り裂きました。

 ポーゴはノコギリで相手の腕を切り裂いてました。

 ポーゴはデビューしていない練習生を血だるまにした事もあります。

 ポーゴは抗争に関係ない女子選手も血だるまにしました。

 当時は憎くて憎くて仕方ありませんでした。ですから敬称略です。

 だからこそ僕は、地雷爆破デスマッチで真正面から場外に落とされて場外に敷き詰められた地雷で爆破されるポーゴを見て対戦相手の大仁田選手へコールを送りました。

 有刺鉄線でぐるぐる巻きにされたままミサイルキックで吹っ飛ばされたポーゴが、背中で受け身をとって有刺鉄線が身体に食い込み苦しむ姿を見て、対戦相手の松永選手にコールを送りました。

 しかし、今思えば、これらはミスター・ポーゴの掌の上でした。

対戦相手と戦いながら常にお客さんとも戦っていた

 悪役レスラーとは、お客さんから嫌われてこそ価値がある。

 正義を輝かす事に意味がある。

 非人道的と思われる事だろうが、大惨事ギリギリまでのとこまで攻める。

 それはお客さんには分からない相手の技量を把握し、踏まえた上での悪行。

 そこまでする悪い奴が当然、反撃を食らった時のお客さんの盛り上がりがすごい。

 もちろん、悪行で相手を倒したとしても、対戦相手が次は必ず勝つとマイクで約束すればお客さんはまた見に来ようと思ってくれる。

 つまりは、自分が影、いや暗黒になる事で、対戦相手を輝かせるわけです。

 単身海外にわたり、悪役レスラーとして戦ってきたのは伊達じゃないです。

 地雷爆破だって落とされた瞬間、身体を捻る事もできたかも知れません。しかしミスター・ポーゴは真正面から落ちていきました。その大惨事ギリギリの受け身の凄み。

 有刺鉄線を巻かれた身体で受け身を取る事で、お客さんからの“ザマーミロ”的な感情を引き出す。

 そういった技術はひけらかすものではありません。相手を輝かせようとしてるんだな、お客さんから嫌われようとしてるんだなと意図が伝わってしまったら、その時点で会場もトーンダウンしてしまいます。

 そういう部分では、対戦相手と戦いながら常にお客さんとも戦うという仕事人。

 そんなポーゴが試合中、場外にパイプ椅子を取りに行くだけでお客さんは蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。

 徹底的に嫌われ怖がられたプロフェッショナルな悪役レスラーなんです。

「アキちゃんを宜しくね」と声を掛けられていた

 このスポナビの第3回のコラム(「2016年、1番大きな出来事は……!?」)でポーゴさんの近況に触れ、コラム用に写真を撮らせていただいたんですが、その時も、「もっと怖い方がいいかな?」、「もうちょっと身体大きく見えた方がいいよね?」と本当に細かい所まで気にするプロ意識の高さには感服します。

※リンク先は外部サイトの場合があります

 90年代あたりから伝説を作ったデスマッチレスラー達の対角線に必ずいたポーゴさん。

 改めて思うのは、優しかったりかわいらしい面は近年ネットでもよく情報として出て来ますが、怖かったり凄い部分は情報が少ないので、思い入れのある方はそういう部分を何らかの形で発信して欲しいです。

 まずはミスター・ポーゴという選手を知りたいのなら「ある悪役レスラーの懺悔」という自叙伝が出版されてるので是非。

 最後に僕がポーゴさんとお会いできたのがWWSのファン感謝デーの暗黒街キャットファイトです。

 僕の奥さんのミス・モンゴルがキャットファイトのプロデューサーをしてまして、近年でもお世話になってましたし、なにより過去にシングルマッチでポーゴさんと試合した事もありますし。その時も火を吹かれてました。

 そして、ポーゴさんの最後のプロレスの試合は、モンゴルが運営している世界プロレス協会でのミスター・ポーゴvs.新井健一郎です。

 なにかとモンゴルはポーゴさんと縁深いんです。

 それもあって、僕も試合会場でごあいさつさせて頂く機会も多かったのですが、お会いするとポーゴさんはいつも「頑張ってね」。

 そして「アキちゃんを宜しくね」と必ず仰います。

 ポーゴさんはモンゴルの事を「アキちゃん」と呼び可愛がってくれていました。

 そういった優しさを感じる機会が多かったので、なおさらの事、手術をして、完全復活した悪くて怖いミスター・ポーゴをリング上で見たかったんですが……残念です。

 ポーゴさんへ。
本当に凄い試合を沢山見せていただきました。
あなたは本当に偉大な悪役レスラーでした。
でも僕達ファンはあまりに早すぎる事にブーイングです。
本当は天国で、「ワカッタラデテケ」と言われて、帰って来て欲しい気持ちでいっぱいですけど、天国にはビクターやグラジもいますから、ポーゴさんも寂しくないでしょうかね。
ただ、昔の仲間と連んで、天国を暗黒化するのだけはやめて下さいね。

 心よりご冥福をお祈り致します。合掌。
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現在全国ツアー真っ最中、次回公演は7月6日長野公演です。
そして、ツアー日程が追加になりました。

<福岡公演>
福岡国際会議場メインホール
9月12日(火)18:30開場/19:00開演

<札幌公演>
道新ホール
9月2日(土)16:30開場/17:00開演

その他の公演日程、チケットなどはチケットサイトで。
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著者プロフィール

プロダクション人力舎所属のお笑いトリオ「東京03」のメンバー。「特技:プロレス観戦」というほどのプロレス通。FIGHTING TV サムライでは「速報!バトル☆メン」の水曜司会も担当している

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