求められる“常識の打破”と“想像力” 2017年ダービー戦線予想のヒント

見どころ満載だった皐月賞

レベルに疑問符がもたれた皐月賞だったが、ふたを開けて見れば見どころ満載の内容だった 【写真:中原義史】

 GI当日は一般エリアに限らず、報道エリアも通常より賑やかになります。専門紙、スポーツ紙を問わず、一線を離れた記者や予想者、放送関係の先輩諸氏が懐かしい顔を見せてくれるおかげですが、先だっての4月16日は、その何人かについつい聞いてしまっていました。「皐月賞、何ですか?」と。そして半数くらいが「ファンディーナ」と口にされましたか。前日売りから人気もそのように推移したようです。

 ファンディーナが勝てば、牝馬として69年ぶりとなる皐月賞制覇の快挙。07年のウオッカのダービー制覇が64年ぶりでしたから、希少性では互角以上、になります。

 この現象を生んだのは、18頭立てで史上最多の11頭が重賞勝ち馬で重賞2勝馬は1頭だけ。こちらの希少性も影響していました。要は確たる中心馬不在。の大混戦の様相が、牡馬戦線のレベルそのものに疑問を持たれた、ということです。

残念ながら牝馬による69年ぶり快挙はならず 【写真:中原義史】

 ところが、残念ながら1番人気に支持されたファンディーナによる、牝馬69年ぶり優勝の快挙は達成されませんでしたが、1分57秒8は皐月賞のレースレコード。ハイレベルと言われた昨年の時計を上回り、それどころかラブリーデイが一昨年の中山金杯で記録した中山芝2000mのコースレコードタイ。

 馬場状態やラップ云々の違いもあって、単純比較ができないことは承知のうえですが、決してレベルそのものが低かったわけではなかったことになります。

 さて、この時計をデビュー5戦目で叩き出したのがアルアインでした。牡馬クラシック第一弾を制したこの馬、ステップレースが毎日杯。そして2着に入ったペルシアンナイトはというと、こちらも主要トライアルレースではないアーリントンC。この1、2着馬それぞれに共通するのが、2000mに実績がなかったどころか、経験自体初めてだったこと。これは一昨年のドゥラメンテとリアルスティールもそうでしたが、レアケースには違いありません。

ステップレース多様化の加速

 先に触れた“出走18頭中、史上最多の重賞勝ち馬11頭”の要因はただひとつ。近年2歳戦が整備されたことによる、早い段階からの2歳重賞の乱立です。

“史上最多の11頭”と書いてきましたが、2歳時に重賞を2勝しながら骨折で戦線離脱したブレスジャーニーが出走していれば、更に1頭増えていました。それだけ皐月賞までに重賞競走があるということ。賞金を加算するための選択肢が増え、どんなステップからでも出走が叶うようになったわけです。

 馬券を買う際に悩ましくなったのは言うまでもありません。従来の“王道”と呼ばれる鉄板トライアルの権威が以前ほどの意味をなさなくなっているのですから。

 かつて「皐月賞よりダービーの方につながりやすい」と言われていた共同通信杯組が、この10年間で4勝を挙げていたことなども顕著な例でしたが、それが毎日杯組とアーリントンC組とで決着した今年、更に加速……いやむしろ形を変えてきたのかもしれません。

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著者プロフィール

中央競馬専門紙・競馬ブック編集部で内勤業務につくかたわら遊軍的に取材現場にも足を運ぶ。週刊競馬ブックを中心に、競馬ブックweb『週刊トレセン通信』、オフィシャルブログ『いろんな話もしよう』にてコラムを執筆中。

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