浅田真央、尊敬を集めた演技と人間性 引退後も語り継がれる希代のスケーター
突然の幕引き「気力なくなった」
引退を表明した浅田真央。15歳から日本フィギュア界の中心に立ち続けた 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
浅田真央(中京大)が10日、自身のブログで引退を表明した。現在26歳、言わずと知れた日本フィギュアスケート界の中心的な存在だ。多くの尊敬と注目を集め、人々を魅了し続けたアスリート。そんな彼女との別れは突然やってきた。
信じ難い気持ちだった。12位と自己最低の結果に終わった昨年末の全日本選手権では、現役続行か否かを問われ、前向きな姿勢を見せていたからだ。ましてや来年には、自身の最終目標としていた平昌五輪が行われる。少なくとも来季までは競技を続けると思われていた。だからこそ突然の幕引きに驚きを禁じえなかった。
「ソチ五輪シーズンの世界選手権は最高の演技と結果で終えることができました。その時に選手生活を終えていたら、今も選手として復帰することを望んでいたかもしれません。実際に選手としてやってみなければ分からないこともたくさんありました」
2014年3月の世界選手権は、ショートプログラム(SP)で当時の世界歴代最高得点(78.66点)を更新するなど圧巻の演技で優勝。しかし、1年間の休養から復帰した15−16シーズン以降、彼女は満足いく内容・結果を得られず苦しんでいた。ブログでつづっているように、実際に再び競技生活を歩んだからこそ、未練なく今回の決断に至ることができたのだろう。
演技の背景にあった根源的な強さ
中でもソチ五輪のフリースケーティング(FS)は大きな感動を呼んだ。金メダル候補の筆頭でありながら、SPでは3つのジャンプをすべてミスして、まさかの16位スタート。心が折れても仕方がない状況の中、彼女は鮮やかによみがえった。冒頭のトリプルアクセルを成功させると、その後も次々とジャンプを決めていく。出場選手で唯一、8回のトリプルジャンプに挑み、6位にまで浮上した。演技が終わった瞬間、彼女の目からは大粒の涙がこぼれた。
もちろんジャンプだけではなく、スケーティングの技術や表現力もあるからさまざまな曲を自分のモノとして、巧みに演じることができる。そして何より、浅田の演技は技術以上に彼女の“生き方”を感じさせた。どんなに困難な状況でもあきらめない。常に最高レベルを目指す。言うのは簡単だが、実践するのは非常に難しい。そうしたアスリート、表現者としての根源的な強さが背景にあったからこそ、演技により輝きが増した。
「選手であるからには、現状維持ではなく、自分ができる最高のレベルで臨まなければいけないし、常に挑戦をしていく必要があると思っています」
彼女が常々、口にしていた言葉だ。