最後のトリプルアクセル…感謝を込めて 涙のあとに最高の“真央スマイル”

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集大成の舞台で自己最高の演技

感謝の気持ちを込めて滑ったFSは自己ベストをマーク。トリプルアクセルを成功させ、“真央スマイル”がはじけた 【写真:AP/アフロ】

 うれしさと悔しさが入り混じった万感の涙。そのあとに見せたはじけるような笑顔。浅田真央(中京大学)が最高の演技を披露して、大観衆を沸かせた。

 現地時間2月20日に行われたソチ五輪フィギュアスケート女子フリースケーティング(FS)。前日のショートプログラム(SP)で16位と出遅れた浅田は、FS自己ベストとなる142・71点をマークし、最終結果は6位となった。

 演技冒頭のトリプルアクセル。滑らかな助走から高く舞うと、スムーズに着氷した。「『よし!』と思いました。緊張もあったんですけど、このままいけると思っていました」(浅田)。昨年2月の四大陸選手権以来となる大技の成功。これで勢いに乗り、その後はコンビネーションジャンプの3回転ループと3回転トゥループで回転不足をとられたものの、6つのトリプルジャンプを転倒なく跳び切った。

「昨日はすごく悔しい思いをして、心配してくださった方もたくさんいると思うんですけど、今日こうして自分の中での最高の演技をできたので、恩返しができたと思います」

 前日のSPは3つのジャンプすべてにミスが出てまさかの16位スタート。この時点で目標としてきた金メダル獲得は絶望的になった。演技後は「何が起こったか分からない」と放心状態。FSへの影響も懸念されたが、見事に立て直し、渾身の滑りを見せた。「自信を持って、練習してきたことを信じ、たとえ昨日のようになっても、とにかく跳ぶという気持ちでした」。FSだけなら3位、技術点も優勝したアデリナ・ソトニコワ(ロシア)に次ぐ2位と、集大成の舞台で本来の実力を発揮した。

佐藤コーチの喝で目を覚ます

 SPのショックを引きずったまま迎えた午前中の公式練習。よく眠れず、少し時間に遅れた浅田はジャンプの修正を試みながらも、「全く体が動かない状態」だった。ジャンプのミスも続き、「大丈夫かな」と本人も心配になった。そんな状況に喝を入れたのが浅田を指導する佐藤信夫コーチだった。

「試合はまだ3分の1しか終わっていない。あと3分の2が残っているんだから気合いを入れろ」

 SPは合計点の3分の1でしかない。まだ残りは十分あるということを佐藤コーチは伝えたかった。さらに練習後、佐藤コーチは自身の教え子である松村充さん(専修大学フィギュアスケート部監督)の話を浅田に聞かせた。松村は1976年のインスブルック五輪、80年のレークプラシッド五輪に出場したかつての名選手。その松村がレークプラシッド五輪に出場した際、SPの後に風邪で寝込んでしまい、全く練習できないままFSに挑んだ。そのとき指導していた佐藤コーチはこう言って松村を送り出したという。「ぶっ倒れてもリンクの中に行って助けてやるから、倒れるまでやってこい」。すると松村は選手人生で最高の演技を披露したのだ。

 この話を聞いて浅田は自身を恥じた。「自分は体調が悪いわけではないし、できないことは絶対にない。今まで練習してきたことを信じてやれば大丈夫だから、気合いをいれていこうと思いました」。佐藤コーチも「かなり目が覚めたんじゃないか」とその効果を感じていた。

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