真央、佳菜子にも勝ち目はある 10代若手にはないベテランの味を

野口美恵

フランス杯では9位に沈むなど不調に苦しむ浅田真央(右)。「すべてが失われた」と弱気な発言も飛び出た 【坂本清】

 フィギュアスケート女子の低年齢化が止まらない。10月からスタートしたグランプリ(GP)シリーズでは表彰台のほとんどが10代で、日本の三原舞依(神戸ポートアイランドクラブ)や樋口新葉(日本橋女学館高)のように、シニアデビューシーズンにいきなり表彰台という若者も相次いでいる。一方で、浅田真央や村上佳菜子(共に中京大)のような20代の選手は、かつてない不調に苦しむ。ベテランが食い込む余地はあるのか、そして若手と戦うには何が必要になるのか――。

「すべてが失われた」フランス杯

 今季の女子を一言で表すならば、シーズン最後まで誰が活躍するか分からない“下克上”である。ジャンプの成否によって、表彰台のメンバーが入れ替わるという、イチかバチかの戦い。各選手の表現力の差は、得点に反映されていないというのが現状だ。

 そんな激戦の中、26歳を迎えた浅田はジャンプが低迷し、スケートアメリカは6位、フランス杯は9位に終わった。フランス杯後は涙も見せ、「すべてが失われた。スケーティングもジャンプも、全部がしっくり来ていない」とこぼした。長年の疲労による左ひざ痛が原因で、練習量を抑えざるを得ないのが現状。練習量が不足しているために、身体面ではジャンプの調子が上がらず、精神面では自信を失ってしまったのだ。気持ちが不安なまま演技しているため、本来のスケーティングの良さや円熟味を増した表現も、まだ表に出ず“秘めて”いる状況だ。

 またこれだけ10代が活躍すると、22歳の村上でさえ“ベテラン”組に分類される。現代舞踏家に演技のブラッシュアップを依頼するなど、表現面でも自分のスタイルを追求し、試行錯誤を続けてきた。しかし今季は「3回転+3回転」がなかなかクリーンに決まらず、磨いてきた表現力をアピールする段階に至っていない。

22歳ながら“ベテラン”組に分類される村上佳菜子。ジャンプにミスが出ており、磨いてきた表現力を発揮する段階に至っていない 【坂本清】

 もちろん2人は諦めたわけでもない。今季の前半にコンディションのピークが来ず、持ち味の表現力も出せなかっただけだ。浅田は言う。

「自分で望んで復帰したので、もう1度その気持ちを奮い立たせてやりたい。とにかく全日本でやるしかない。最後の最後までやるだけです」

 同じく村上も諦めてはいない。11月7日に22歳を迎えると、自身のウェブサイトでこうコメントした。

「全日本選手権では自分のすべてを出し切って、次こそは皆さんの心に残るような演技ができるように頑張ります」

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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