重圧も力に、成長遂げた19歳・阿部一二三 柔道界期待の選手から“日本のエース”へ
世界選手権代表に選ばれた19歳の阿部一二三。期待の選手から、日本のエースへ。五輪出場の夢へ向けて、日々成長を遂げている 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】
「やっと東京五輪へのスタートラインに立てたのかなと思います」
大会後、ホッとした表情に笑みを浮かべて話した。
高校生で講道館杯V 高まる期待とプレッシャー
しかし、当時の心境は「周りからの期待やプレッシャーを高校生のときは受け止めきれなかった」。数々のタイトルを獲得し脚光を浴びる一方で、苦しみも抱えていた。
リオ五輪出場ならず……「完全に押しつぶされていた」
「完全に押しつぶされていました。だから成績も思うように出なかったのかなと思います」
翌16年に行われるリオ五輪代表になるためには、国際柔道連盟(IJF)が主催する大会で付与される世界ランキングを決めるためのIJFポイント獲得が必須条件。阿部のリオ五輪代表はこの時点で、ほぼ絶望的になった。
阿部が常々、口にしていた五輪出場への夢。手が届きかけていたリオでは出場かなわず「悔しいです。やっぱり出たかった」と振り返ることも。それでも「とにかく勝ってトップに居続けなければ」と、すぐに気持ちを切り替え、東京五輪へ向けて準備をはじめた。大きな舞台に立つため、まず目標に据えたのが世界選手権の代表権を勝ち取ること。昨年は、春の全日本選抜で初優勝を飾ると、7月の柔道グランドスラム・チュメニ、12月のグランドスラム東京を制覇。今年に入ってからも2月のグランドスラム・パリで金メダルを獲得するなどの実績を重ねた。