重圧も力に、成長遂げた19歳・阿部一二三 柔道界期待の選手から“日本のエース”へ

本川由依

つかんだ手応え オール一本勝ちで体重別連覇

体重別選手権はオール一本勝ち。決勝戦も力強い柔道を見せた 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 そして4月。“目標”に向けた最終選考会でもある今大会で、阿部は圧倒的な力を見せた。竪山将(パーク24)との初戦を大外刈りで一本勝ちすると、準決勝の藤阪太郎(国士舘大)にけさ固めで抑え込み一本で勝ち上がる。過去2戦2敗を喫している高市賢悟(旭化成)との決勝戦は、開始直後から阿部優位に試合が進み、残り1分58秒、阿部が大外刈りで強引に高市を畳に沈め一本。優勝を果たした。

 試合後、「自分にとっても成長できた試合だった」と振り返った阿部。「今日試合をしてみて、技をしかけた瞬間に自分の技の精度や威力が上がっているのが分かるぐらい、感覚が今までと違った。決勝でも、今までよりも、組み手でしっかり持てて投げられたので、『いける』と自信が湧きました」と、手応えを感じながらの勝利だった。

 精神的にも大きく成長を見せた。以前は、高まる期待がプレッシャーとなり自身を苦しめた。しかし今は、「そのときの経験や試合で負けたことすべてが自分の糧になっていて、今は重圧を受け入れて試合ができます。むしろいいプレッシャーになっています」と話す。

五輪出場へ決めた覚悟「研究されたら、さらに上をいくしかない」

世界選手権最終選考会となった体重別選手権を2連覇で飾った。味わった経験が、さらに阿部を強くする 【写真:アフロスポーツ】

 大会後、全日本柔道連盟の強化委員会から発表された代表には、「阿部一二三」の名前が連なった。全日本男子の井上康生監督は「国際大会の結果を見ても、国内での成績を見ても、圧倒的な力を持っている」と選考理由を述べた。

 阿部は世界選手権で戦うことについてこう話す。「これから研究されて、警戒される存在になったとしても、東京五輪で代表を勝ち取るためには、研究されたら、さらに上をいくしかない。誰にも負けない圧倒的な力をつけて、少なくともあと3年間は日本のエースとして負けなしでやっていく気持ちを持って柔道に取り組みたいです。また、世界選手権は他の国際大会とは雰囲気の違った大会だと思う。初めて出るので、自分の力が、その舞台でどれだけ通用するのか試すのが楽しみです」。

 “ホッとした表情”は、ほんのつかの間。期待の選手から、日本のエースへ――。日の丸を背負う覚悟を決めた阿部の挑戦は始まったばかりだ。

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著者プロフィール

1993年2月6日生まれ。広島県世羅郡出身、神奈川県在住。スポーツは柔道、バレーボールを中心に取材。スポーツマガジン「StandardNEXT」などに寄稿するほか、グルメ、ファションなどでも活動している。

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