MLB最年長右腕バートロ・コローン “ビッグ・セクシー”と愛される理由
速球派から技巧派へ転向し新境地へ
今季は前半で7勝を挙げオールスターにも選出された。写真はオールスターの練習でメッツの同僚ファミリア(右)と話すコロン 【Getty Images】
「バートロはプランを持ってゲームに臨み、確実に遂行する。こちらの目が外角に行っていると思ったら、インサイドに2シームを投げ込んでくる。コーナーに高確率で決めてくるから、速球が来るとわかっていてもなかなか打てないんだ」
昨季までメッツでチームメートで、今季は地区ライバルのナショナルズでプレーするダニエル・マーフィーはそう証言する。この投球術を糧に、コローンは40歳で迎えた13年に18勝6敗、防御率は自己最高の2.65をマーク。メッツに移籍した過去2年も15、14勝を挙げるなど、健在ぶりを証明してきた。
打者ではバリー・ボンズ、投手ではロジャー・クレメンスなど、ステロイド使用が発覚した選手というと、投手、打者ともにパワー型が思い浮かぶ。現在のコローンはそれとは正反対のタイプ。現在も薬物使用を疑う関係者がいないわけではないが、“適応能力”が高く評価される米スポーツ界において、加齢とともに巧みに変化した“ビッグ・セクシー”が称賛されているのは理解できるところではある。
常に「ゲームは楽しむためのもの」
昨季からメッツのクローザーを務める同じドミニカ共和国出身のヘウリス・ファミリアは、先輩の影響についてそう述べていた。風貌、経歴からは想像もつかないが、実際にチーム内では統率力に対する評価も高い。
他にもラテン系若手選手の多くがコロンの背中を追いかけて歩いている。ファミリアだけでなく、メジャー昇格直後のラテン系プレーヤーのロッカーがコローンのすぐ近くに据えられているのは、メッツ上層部の配慮であるに違いない。
「僕が投げるときはいつでもみんなが丹念に観察してくれているのはわかっている。彼らに常々伝えているのは、最も重要なのはこのゲームは楽しむためのものだということ。いつ最後のゲームを迎えるかはわからないから、楽しむべきなんだ」
メッツ在籍も3年目を迎え、いつしかリーダーとして捉えられるようになっても、コローンのポリシーは変わらない。“最後のゲームかもしれない”と繰り返し述べつつ、そこに悲壮感はない。
「イチローが僕から打ってくれれば名誉だね」
「イチローは僕にとっては他の選手と同じ(=意識しているわけではない)。しかし、長きにわたって素晴らしいキャリアを過ごしていて、今では同じ地区でプレーしている選手。そして彼が(3000本安打という)大記録に近づいているのもわかっている。僕から打ってくれれば名誉だね」
オールスター期間中には、イチローに関する質問をぶつける日本メディアにそんなサービスのようなコメントを残していた。7月22〜24日にはマーリンズ対メッツの3連戦が組まれているが、残念ながら先発機会はなさそう。本人の望むように(?)、最年長投手のコロンが、最年長野手であるイチローの記録達成に立ち会う“フェアリーテイル”は叶いそうにない。それでもこの2人の大ベテランは、今後もそれぞれの形で周囲の熱い視線を浴び続けることだろう。
長持ちの秘訣は、稀有なプロ意識と日々を大事にする姿勢。「50歳までプレーしたい」と話すイチローと同じく、カラフルなコローンにもまだまだ活躍してほしいと願っているファンは数多い。彼のように40歳を超えても仕事を楽しみ、“セクシー”なままいられることは、男にとって理想的な歳の取り方に思えてくるのである。