手倉森ジャパンが五輪で狙うスタイルは? リオ代表vs.ロンドン代表 データ徹底比較
手倉森ジャパンのコンセプトは“柔軟性”
【データおよび画像提供:データスタジアム】
手倉森監督がチーム結成当初から掲げてきたコンセプトに“柔軟性”がある。「ポゼッションスタイル(ボール支配を重んじるサッカー)で育ってきた選手たちに、サッカーはそれだけでないことを伝えたい」と語ってきた指揮官は、「(点を)取れないなら取らせるな」と言って、まずリスクをマネジメントする考え方を植え付けた。カウンターを受けるリスクのあるパスをつなぎ続けるくらいなら、時にはロングボールを蹴り込むことを選択させた。同時にボールは前へ動かして、縦に加速することを意識させた。
ここでは比較対象として、関塚隆監督が率いたロンドン五輪代表のアジア最終予選時のデータを参照してみたい。ロンドン五輪予選はホーム&アウェー方式、リオ五輪予選はセントラル方式という大会形式の違いがあるため、厳密な比較には向いていないが、試合数は同じで、傾向を読み取ることはできるだろう。それはデータ的にかなり明確な差違があるからでもある。
「ボール支配にこだわらない」リオのスタイル
「パス数」もロンドンの588に対して、リオが406と大幅に少ないが、それ以上に特徴的なのは「パス前方比率」だろう。これは横パスやバックパスではなく、敵陣に向かう方向(つまり前方)に出たパスの割合。この比率が低ければ低いほどボールを大事にするサッカーであり、高ければ高いほど縦に速く攻めていくサッカーという見方もできる。リオは44.6%と半分弱のパスが前に進むパスとなった。
また単に前に進むだけではなく、「攻め切る」スタイルも特徴だった。「ボールを奪ってからシュートまでの平均経由時間」はロンドンが20.0秒だったのに対し、リオは11.7秒と大差がある。「奪ってからシュートまでの経由パス数」も6.1本だったロンドンに対して、リオは2.9本と半分未満。奪ったボールをシンプルに前へ運んでフィニッシュに持ち込んでいくのがチームとしての狙いであり、それを実践していたことが分かる。
一般的に“弱者の戦術”とされることの多いカウンタースタイルだが、手倉森監督の姿勢は「目指すのは(ポゼッションと縦に速いカウンターサッカーの)両方を使い分ける柔軟性を獲得すること」と一貫していた。その意味で、最終予選の内容はカウンターに寄り過ぎた面もあったように思えるが、本大会から逆算したチーム作りの中にあったと思うと見え方も変わってくる。